電力各社が春からの料金値上げを国に申請したことから、電気代がさらに上がる可能性が高まっています。一部の電力会社で顧客情報の不正閲覧問題が発生したことや、コストの見積もりに不備が指摘されたことなどもあり、岸田首相は値上げについてより厳格に審査するよう求めています。このため、値上げが5月以降にずれ込む可能性も出てきましたが、何らかの形で料金体系の変更が行われる可能性は高く、家庭にとっては厳しい状況が続きます。
一方で政府は、家計に対する電気代の補助をスタートしており、1月からは電気料金が安くなっているはずです。料金値上げの話と補助金の話が絡み合っていることから、よく分からなくなっている人も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは電気料金の仕組みについてもう一度、整理してみたいと思います。
現在、電気料金(規制料金)は、電力各社が政府が認可を求める形で決まります。しかしながら、申請した価格で固定されるのかというとそうではなく、原油価格や天然ガス価格の動きに合わせて上下する仕組みになっています。電力会社にとって燃料代は大きなコスト負担ですから、原油価格が上がれば一定の範囲内で電気料金を引き上げ、逆に原油価格が下がれば料金を引き下げます。
電力会社によって使う燃料の比率は異なりますから、各社が全く同一の動きをするわけではありませんが、たいていの場合、原油価格と天然ガス価格、石炭価格は似たような動きになるので、電気料金は原則として原油価格に連動して決まると考えてよいでしょう。
グラフは2011年から2023年までの、東京電力におけるモデル世帯での電気料金を示したものです。
2011年は月あたり6000円台でしたが、その後上昇が続き2015年には9000円近い水準まで料金が上がっています。その後、料金は低く推移し、つい最近まで7000円台が当たり前でした。ところが2021年以降、急激な原油価格の上昇を受けて急上昇し、2022年8月には上限価格である9126円に達しました。
グラフを見ていただければ一目瞭然だと思いますが、過去の料金は基本的に原油価格に連動して動いていることが分かります。2022年8月以降は、上限価格に達したことから料金が横ばいになっていますが、これは料金が基準値から1.5倍まで上昇した場合には、それ以上価格を上げることができないという仕組みになっているからです。この水準を超えた分の費用については電力会社の持ち出しとなるため、各社は収益が悪化しないよう春からの値上げを申請したという流れです。
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