「子どもは持たない」と決めて結婚した由紀さん(44歳)と信也さん(59歳)。歳の差があるお2人を待っていたのは「選択子なし夫婦」への周囲からの少し棘のある言葉と視線でした。2人の意志が固かったことからやり過ごすことができたといいます。さらに今回は「特性による生きづらさ」を抱えながらの夫婦2人きりの人生で、突き当たった問題について考えていきます。

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「1日も早く仕事を探してローンと生活費を半分持って!」高齢夫の悲痛な叫び。年の差・発達凸凹夫婦を襲った予想外のアクシデント_img0
 
取材者プロフィール 由紀さん(仮名):44歳、単発アルバイター
信也さん(仮名): 59歳、グラフィックデザイナー

     
 

「妻を扶養する」という意識がゼロの夫


「子どもがいない夫婦の毎日は、結婚生活というよりも同棲生活のようで、比較的順調でした。子どもを意図的に作らないという形は、時々思いもよらない角度からグサッと攻撃されることもありましたが、夫婦の方針はブレなかったので、『そう感じるひともいるよね』となんとか受け流すことができました」

平成・令和の世で、子どもを持たないことで周囲からとやかく言われるとは正直にいって驚きもあります。たしかに、政策としては少子化対策が盛んであり、間接的に由紀さんが肩身の狭い思いをするシーンもあるようでした。そのような状況で、それでもお2人の考えが完全に一致していたことは何よりです。

それほど意志が固ければ、問題はない……そう思ったのですが、「家庭の構成メンバーが2人きり」というのは、また種類の違う問題を運んできました。

由紀さんは注意力が散漫気味であることを自覚していて、ADHDの傾向があると自己分析しています。実際に医師からは、検査を受ければ診断もつくだろうと言われたそうです。

そしてご主人の信也さんは、少し自閉の傾向があるとのこと。信也さんはWEBデザイナーなので、基本は一人でコツコツできるそのお仕事に大きな支障はありませんでした。しかし当時、営業職として働いていた由紀さんの仕事には、徐々に影響が出てしまいます。

「結婚して3年ほど経った頃、私の不注意で職場の取引先に損害が出てしまいました。それが原因で会社に居づらくなり、精神的に不調となって退職をしました。

暫定的ではありますが専業主婦と、自宅で仕事をするWEBデザイナー。……子どもがおらず、夫婦2人きりというのは、順調なときはとてもいいんです。でも、問題が起こったり、お互いに不満が生まれたりすると、逃げ場がない。気を紛らわしたり、不満の矛先をかわしたりしづらいんですね。どうしたって興味の対象はお互いのみになりますから」

信也さんは由紀さんに対して、結婚してからも「扶養する」という意識は希薄だったそうです。というよりも、そのつもりはまったくありませんでした。子どもの誕生を機に、夫は妻と子どもを養うという気持ちが湧くこともあると思いますが、お2人にはそのきっかけがありません。信也さんは「妻は対等な相方で同居人」という意識が強かったのでしょう。

そして彼が口にした言葉は、由紀さんにとって少なからず衝撃的でした。

「1日も早く、仕事を探して被扶養者から外れてほしい。そして定年までは、状況が変わったとしてもなんとか仕事をして、ローンの半分、生活費の半分を稼いでほしい」