「こんなに育児が面白いとは。早く言ってよ! という感じだよね」

56歳で初めて父に、45歳で初めて母に。壮絶な出産を乗り越えて思った「こんなに育児が面白いとは。早く言ってよ!」_img0
2歳になった息子さんを抱っこする中本パパ。

過酷な出産を乗り越えた2人ですが、子育てはまだまだ始まったばかり。息子さんを日々世話する中、夫婦は“高齢育児”を通して、体力の問題やお金への心配、社会制度の課題などに直面していきます。

それでも、中本さんは子どもを育てることについて、こんなふうに感じているようです。

育児書では、困ったときの対処法ばかりが強調して書かれている。また、世間一般に、「育児って大変なのよ」「子育ては、苦労の連続だ」ということばかりが広まっている。もちろん、大変なことも多く、苦労も尽きない。これからもっと大変だろうが、それらを補ってあまりある楽しい発見が日々、たくさんある。

「こんなに育児が面白いとは。早く言ってよ! という感じだよね」

妻とよく、そう言い合って笑うことがある。これは50代と40代(まもなく、60代と50代)という人生経験を経てきてしまったパパとママだからということもあるだろう。

しかし、もっともっと、子育ての楽しさとかやりがいが世間に広まらないと、理屈ばかりが先行する少子化対策は、前に進まないだろうと実感している。

ウチは大変な思いをして子どもが産まれたから、余計にそう思うのかもしれないが、もっともっと大変な家庭はいくらでもある。肝心なのは、そうして子どもが産まれたことの尊さ、かけがえのなさであり、日々の暮らしがいい意味で一変するということをもっともっと知ってほしい。

――『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました』より

本書の冒頭、中本さんは「どこの家庭にもあり得ることで、けっして我が家が特別だとは思っていない」と前置きをしつつ、でもだからこそ「産まれてくることは“あたりまえの奇跡”である」と伝えます。

 

緊迫感あふれるコロナ禍の高齢出産、医療現場で働く医師やスタッフの献身、そして高齢育児が始まってからの悲喜交々の日常――。壮絶でありながらも、登場人物全員が命をつなぐために全力を尽くすこの物語には、子どもを持つことへの漠然とした不安を和らげてくれる、そんな力があるような気がします。

著者プロフィール
中本裕己(なかもと・ひろみ)さん

産経新聞社 夕刊フジ編集長。1963年、東京生まれ。関西大学社会学部卒。日本レコード大賞審査委員。浅草芸能大賞専門審査委員。産経新聞社に入社以来、「夕刊フジ」一筋で、関西総局、芸能デスク、編集局次長などを経て現職。広く薄く、さまざまな分野の取材・編集を担当。芸能担当が長く、連載担当を通じて、芸能リポーターの梨元勝さん、武藤まき子さん、音楽プロデューサー・酒井政利さんらの薫陶を受ける。健康・医療を特集した新聞、健康新聞「健活手帖」の編集長も兼ねる。48歳で再婚し、56歳で初めて父親になる。

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『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました - 生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』
著者:中本裕己 発行:ワニ・プラス 発売:ワニブックス 1540円(税込)

不妊治療もしなかった中年夫婦に、突如やってきた「赤ちゃん」。妊娠7カ月目、おたふく風邪からの心筋炎で母子ともに生命の危機にさらされるも、命をつないだのは医療機関の連携プレー、そして母になった妻の「生きたい」という思い――。著者が実体験した、父になるまでの過酷な道のりと、高齢になってからの子育ての苦労と喜びを、温かな眼差しで綴ります。


構成/金澤英恵

 

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