派手なストーリーがあるわけでもないし、スペクタクルでもない


まさに『ラビット・ホール』の稽古が佳境というなか、稽古前のお時間をいただき、シルビア・グラブさんにお話を伺いました。

『ラビット・ホール』は幼い子どもを亡くした夫婦と、その家族が織り成していく日常を描いたお話。シルビアさんは宮澤エマさん(ベッカ)と成河さん(ハウイー)が演じる夫婦を、エマさんの実母という役柄で、ずっとそばで見守っていきます。

――まずは『ラビット・ホール』という作品への出演をオファーされたときのお気持ち、そして、この作品への想いを聞かせてください。

シルビア・グラブさん(以下、シルビア):『ラビット・ホール』という作品は知らなかったので色々と調べてみたら、ニコール・キッドマン主演の映画があることが分かり、すぐに取り寄せて観てみました。正直に言うと、すごく難しい舞台になるんじゃないかと思ったんです。派手なストーリーがあるわけでもないし、スペクタクルでもない。きっと動きも少ないはず。やり過ぎちゃうと多分成立しない作品だと思うんです。だから、「これはきっとチャレンジになるだろう」と思いました。でもチャレンジは好きなので(笑)。

傷ついた家族の再生の物語。シルビア・グラブ、リアルに進む会話劇への新たな挑戦【ラビット・ホール】_img1

 

そうやって破顔したシルビアさん。若いときから数多くの舞台を踏み、あらゆる役柄に挑戦してきた姿を見れば、彼女が“チャレンジ好き”なのは、一目瞭然です。

シルビア:なので「新しいチャレンジをさせていただけるんだ!」というのがオファーされたときの気持ちです。また、(宮澤)エマちゃんが主演というのも嬉しかったですね。また親子を演じることができるんだなと思いましたし、エマちゃんの旦那さんの役を務められる成河さんとの共演も楽しみ。成河さんとは今回が初めてなのですが、彼が『真夏の夜の夢』に出演していたの印象が鮮明に残っていて、いつか共演したいとずっと思っていた方ですので、嬉しいですね。俳優としてすごく面白い。今も一緒にお稽古していて、すごく勉強になっています。

 

今回シルビアさんが演じるのは宮澤エマさんが演じる主人公・ベッカの実母・ナットです。シルビアさんが観られたというニコール・キッドマン主演の映画版では、ダイアン・ウィーストが演じています。

シルビア:最初はちょっと、私は年齢的に若すぎるかなと思っていたんです。今でもややそう思っているんですが、お稽古をやっているうちにエマと土井ケイトちゃんが私の娘役なのでバランス的にとてもいい感じになってきたので、自分の中でいかに、そしてどこまで“年齢を上げていくか”を模索しているところです。

共演者の方々、皆さんとてもナチュラルな芝居をされるんです。本当に日常の家族内の兄弟や親子、夫婦で交わされる会話がメインなので、それが面白いのですが、絶対に“やりすぎ禁物”なんです。いかに抑えていかにリアルに演じていけるか、というのが今の課題だと思っています。