打算的に見えて愛情深い。不安定な本性が見え隠れする人間模様が魅力


——世の中を裏から操る“フィクサー”を本格的に描く連続ドラマは日本初だと話題ですよね。

内田有紀さん(以下、内田):「早く先の展開を知りたい!」と前のめりに台本を読み進め、このような重厚なスケールの作品に参加できることが幸せでした。もともと私は男性同士の権力争いや企業の政治を描いた作品が好きで、今回の『フィクサー』は“どストライク”な世界観なんです。陰謀や裏切り、人間の本性が見え隠れする人間ドラマを井上由美子さん(『白い巨塔』や『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』など数々のヒット作を手掛けてきた脚本家)が描いてくださったので、視聴者の方々も最終話まで引き込まれっぱなしになってしまうと思います。

 

——概要をチェックするだけでもWOWOWらしい見応えのある作品であることが分かります。俳優さんにとっても“演じがい”を感じやすかったのでは?

内田:そうですね。いつもWOWOWさんは練りに練った脚本と一流の制作スタッフさんを集めて最高の環境を用意してくださるので、俳優も安心して自分のすべてを出し切ることができるんです。むしろ人生で経験してきた全てを注がないと太刀打ちできないような緊張感もあって、私にとっては勝負の場所です。

 

——内田さんが演じる沢村玲子はTVの報道番組の人気キャスターで、主人公のフィクサー・設楽拳一(唐沢寿明)と情報交換をする関係です。聡明で気が強そうなキャラクターは昨年出演された『未来への10カウント』や『君の花になる』で演じられた役柄と似ている部分もあったんでしょうか。

内田:男勝りで向上心がある部分は最近の私が求められてきた役と似ているのですが、沢村玲子は女の性(サガ)が色濃く出てくるシーンがあるんです。出世のことしか考えていない打算的な女性に見えて、自分でも抗えないような他者への愛情や優しさを持っている人。そういう不安定な部分を持っているから、私も理性のリミッターを外して本能をさらけ出してみようと。そして、自然とそうなれるような雰囲気を西浦正記監督が作ってくださるし、私がどの方向に行ったとしても唐沢寿明さんが必ず拾ってくださるので、本当に“演じがい”があって。俳優冥利に尽きる現場でした。

 

唐沢さんと一緒に芝居をさせていただいて、そのなんでも受け入れる懐の深さに驚かされました。それこそ若い頃から日本のエンターテインメントの最前線で幅広い役を演じてこられた方だからこそ、フィクサーという役柄に厚みや説得力をもたらせる。同じように「私も人生経験を芝居に還元できる年齢になってきたのかな?」と、なんだか感慨深い気持ちになったりもして(笑)。でも、視聴者の方々はきっと俳優の軌跡なんて考える余裕がないくらいスリリングな展開になっています。