ユーモラスで一筋縄ではいかない魅力的な女性を描くことで有名な作家の柚木麻子さん。柚木さんが書く小説やエッセイでは常に社会の問題や弱者が置かれた立場への鋭い視点が光ります。

最新作『オール・ノット』では、実家が経済的に困窮しており、運動部に入ることや修学旅行も諦め、奨学金を返済することだけを考えて人生設計をする女性が主人公です。奨学金の返済で苦しむ若者が問題になる昨今の社会ですが、奨学金を借りて進学した若者には、堅実で安定した人生を歩むことが求められ、返済できなければ「自己責任」の目が向けられます。今の若者達は、「失敗できない」状況に立たされている、と語る柚木さんにお話を伺いました。(聞き手・ヒオカ)

 

柚木麻子
1981年東京生まれ。恵泉女学園中学校・高等学校出身。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。『ランチのアッコちゃん』『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『とりあえずお湯わかせ』など著書多数。

 

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【写真】タイトルにもなった「オール・ノット」を自ら身につけてインタビューに臨む柚木麻子さん。