ずるい言葉②「女の子なんだからそんなことしなくていいよ」

 

いわゆる力仕事が典型的ですが、「女の子は」「女性は」それをしなくてよい、と男性に言われることがあります。それはラッキー、で済ませてよいでしょうか? さまざまなパターンを考えてみましょう。

そもそも、「そんなことしなくていい」と言った男性よりも、言われた女性のほうがその作業が得意な場合があります。大量の資料の移動と収納を「男手」に任せたら、資料の並べ方が悪くてその後の仕事に支障が出る、こんなことなら自分でやればよかった、と女性が思うこともあるでしょう。

 

それほどの力仕事ではないので、女性も一緒に作業したほうが早く終わって効率的、という場合もあるでしょう。

また、代わりに何かをさせられはしないか、という点も気になります。

代わりに何かするよう要求されなければされないで、不安になるかもしれません。男性たちが力仕事をする中で何もせずに突っ立っていたら、あとで誰かに「あいつは仕事をろくにしていなかった」と言われたりしないだろうか。「やっぱり女は役に立たない」などと言われないか。そんなことを考えるくらいなら、いっそ一緒に机を運んだほうが気は楽かもしれません。

「女の子なんだからそんなことしなくていいよ」と言われて「はい、そうですか」と受け入れていいのか、それを考えること自体が個々の女性にとっては悩みの種だ、と述べてきました。長期的な影響を考えても、それをしない、という選択は手放しにすすめられないでしょう。その作業が必要不可欠なものであれば、「女性とはその必要不可欠な作業をできない人々」という評価が与えられる可能性がつねにあります。

とはいえ、「ほかの女性や後世の女性のことを考えたら、『女の子なんだからそんなことしなくていいよ』と言われてラッキーと思っていてはいけない」と片付けるのも違う気がします。女性が困った状況に置かれていると解説しながら、その状況を改善するためにラッキーと思ってしまう女性を批判すればよいと考えるのでは本末転倒です。

「女の子なんだからそんなことしなくていいよ」にしたがうことは、一見ラッキーなようでそうでない場合もあり、また長期的には女性の能力を低く見積もらせる可能性も生みます。ただし、女性がこの言葉に抵抗することよりも、この言葉を言う側がより適切な発想や表現で話すことを目指すべきです。