“マテリアル・ガール”だった過去
日本では、収入のすべてをファッションに費やしてブランドもののバッグや服を買いまくっていた頃の井筒さんを知る友人からすれば、その変わりように驚いたそう。
「友達に『イギリスの何がそんなにいいの?』と言われて、日本はマテリアル(物質主義)だからと答えたら、『あなたが一番マテリアルだったのに、どの口が言うの?』と呆れられました(笑)」
また、美容ライターをしていただけに、アンチエイジングケアにも固執していたという井筒さん。
「日本にいると、若いことや、若く見えることがすべて。できることは何でもやりまくっていました。日焼け止めだってベッドサイドに置いておいて、朝起きて、塗ってからじゃないと布団から出ないようにしていたくらいで。
でも、ヨーロッパの人たちは、日焼けはバンバンしているし、シミやシワがあっても気にしない。年を取っていることを恥ずかしいと思うマインドが全くない。そういうところに身を置いてみると、私も気にしなくていいんだ、って思えてきました」
とはいえ、それはヨーロッパだからそう思えるだけで、日本に帰ればまた逆戻り、ということにはならないのでしょうか?
「もし自分が20代だったら速攻戻るかも。でも、私もいい歳なので、無駄な労力は割きたくないし、今なら日本でも全然気にしないと思います。赤の他人に変な人だとか、いい歳して、と思われたって実害を被るわけでもないし、そんなことを言う人とは付き合わなければいいだけの話です」
羞恥心は自信のなさの表れだった
井筒さん曰く、“関西のおばちゃん”的な、いい意味での図々しさを身につけられたのは、ロンドンやパリで通っていた語学学校での気づきも大きいといいます。語学学校ではみんなの前でのプレゼンテーションをする機会が多く、井筒さんは毎回緊張していたそう。でも、クラスメイトに、「なんでそんなに緊張しているの? 聞くのは友達の私たちだよ!」と言われて、我に返ります。
「自分が思っていた羞恥心ってなんだったのかと。人前のプレゼンテーションって、結局は自分がどれだけ自信を持ってできるかということ。緊張しながら場数を踏んでいくうちに、発表内容を暗記するくらいに練習しておくと緊張しなくなることを発見したんです。自分に自信がないから緊張するわけで。そうやって自信と図太さを身に付けていったのかもしれません」
英語については、高校・大学院時代でのアメリカ留学経験から特に不自由ではなかったものの、フランス語はパリに住み始めてから勉強を開始したので、40歳からの新たな挑戦になりました。でも、井筒さんにとっては、語学ができない恥ずかしさよりも、学べる喜びの方が勝っていたといいます。
「アメリカに留学していた時は、一番後ろの席で質問なんて全然しなかったけど、パリではいつも前の席に座って、バンバン質問してました。間違ったら恥ずかしいからといって喋らなければ、喋って勉強するという貴重な機会もなくなるわけで、恥ずかしいことは何もないはず。特に語学は、勉強すればするほど身に付いていることが実感できる学問だからやりがいもある。中年になってからの勉強はいいものだなと思ったくらいです」
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