マウントを取る後輩、悪気がない振りをしてディスる同僚、モラハラ上司⋯⋯職場に一人はいる、嫌な人。彼らに対しては「言葉の護身術」を使って、ムダに「反応しない」、ムダに「争わない」のが極意です。弁護士・後藤千絵さんの『職場の嫌な人から自分を守る言葉の護身術』より、職場でよくある実例とともに「言葉の護身術」を抜粋してご紹介します。

ケース① 「知らないんですか?」と新入社員にバカにされたら?

職場の嫌な人は「言葉の護身術」で対処する!マウントを取る後輩、ディスる同僚、モラハラ上司から自分を守ろう_img0
写真:Shutterstock


実例:
Nさんは、今年で社会人生活12年目に入ります。昨年、一般職から総合職への転換試験を受けて合格し、今年からチーフとして、チームをまとめる仕事も任せてもらえるようになりました。社内の評判も良く、「Nさんが言うなら」と他部署でも仕事に協力してくれる人がたくさんいます。
そんなNさんのチームに、O君という新入社員が配属されました。O君はイマドキの若者らしく、上下関係や縦社会が苦手な様子。話すとそれなりの返事が返ってくるものの、何を考えているのかわからないところもあり、Nさんはどう接していいのか戸惑うことが多かったといいます。
そんな折、チーム内で会議が開かれ、O君も参加することになりました。どうやらO君はIT関係にめっぽう強く、それが決め手となって採用されたらしいのです。
ところが、会議の席でO君は、NさんのIT関係の質問に対して半笑いをしながら、
「そんなことも知らないんですか? 基本中の基本ですよ。よく今までやってこられましたね」
と、かなり意地悪な言い方をしてきたのです。ただ、O君の言うことにも一理あったのか、周囲は沈黙したまま。
Nさんは、みんなの前で新入社員O君に恥をかかされた形になってしまいました。

 


言葉の護身術:知らないことを「逆手にとる」


会社に入って10年を過ぎれば、知識や経験も増え、人脈もそれなりに広くなって、仕事が面白くなってくる時期です。

生意気な部下や、何を考えているのか見当もつかない新入社員の指導をする羽目になり、やっと上司の気持ちがわかったという人もいるはずです。

生意気なくらいであればまだかわいいもの。
なかには、ライバル心をむき出しにして、マウントを取ろうとしてきたり、

「それではうまくいかないと思います!」
などと根拠もない意見で真っ向から対決を挑んでくる部下や後輩もいます。

彼らの行動は、承認欲求が強い「かまってちゃん」タイプの典型です。
「僕のほうがうまくできるのに......」
「私をもっと認めてほしい」
といった承認欲求が「かまってちゃん」タイプの主な原動力です。

このタイプには、いったん自分のプライドを捨てて対処することが賢明です。

では、「実例」で紹介したNさんは、どんな対処法をとったのでしょうか?

さすがに、その日は悔しさと恥ずかしさで眠れなかったそうですが、Nさんが最新のITツールが大の苦手であったことも事実です。

Nさんは覚悟を決めて、翌日まっすぐにO君のところに行きました。そして、

「昨日はまるでわかっていないような質問をしてしまって、ごめんなさい」
「じつは、私は大の機械音痴でITにもうとくて、本当に恥ずかしいわ」
「あなたは得意そうだから、教えてもらっていい?」

と素直に頭を下げました。

O君は意表をつかれたようでしたが、少し恥ずかしそうに「いいですよ」と言ってそれからは丁寧に教えてくれたそうです。

新入社員に頭を下げるなど、なかなかできることではありません。結果的に、「恥をかかされたことを逆手にとった」Nさんの株は、ますます上がったそうです。

年齢とは関係なく、いくつになっても、変なプライドは捨てて、素直に教えを乞うという姿勢を持ち続けることは大切なことです。

その際のポイントは、
「年のせいにしてはいけないけど、IT関係は苦手なの」
と正直に苦手な分野を告白したうえで、
「あなたは得意そうだから、ぜひ教えてほしい」
と、相手をほめながら、教えを乞うようにすることです。

前述したように、相手の長所を認め、ほめたうえで、教えを乞うという姿勢は、相手の承認欲求を満たすうえで、とても効果的な方法です。
部下や後輩でも関係なく、使ってみるといいでしょう。