議員になるのに「実は」向いている人がたくさんいる
そこで、ミモレ世代です。子どもの教育費と住宅ローンから自由になったあなた。男社会での辛酸を舐めてキャリアを積んできたあなた。しかしそこで名誉男性化せずに踏みとどまって実力でサバイブしたあなた!
手元にちょっとまとまったお金もあるでしょう。もう大きな出費はなく、住む家もある、応援してくれる働く伴侶がいる、そんな人はなおさら適任です。挑戦して失敗しても生活に打撃が少ないので、リスクが取れるのです。挑戦って、つまり立候補ですよ! 町議でも市議でも県議でも国会議員でも、機会があればぜひチャレンジを。「もう子育ては終わったし、キャリアも人脈もあるし、定年前に独立しようかな。空の巣症候群になるくらいなら、いっちょ新しいことでも始めてみるか」と起業セミナーや大学院の受験要項なんかを眺めている人の中には、本当は議員になるのが向いている人もいるんじゃないかと思います。
政治に関わることは、自分が生きる環境をカスタマイズするということでもあります。人はみんな、思うようにならず、変化し続ける体を生きています。たとえ予測できないことが起きても「ああもこうも生きられる」と思えるような世の中になったら、どれほど安心でしょう。そうはなっていないから、今の日本では苦しい思いをしている人や、生きることに希望を持てない人が多いのです。「お金を生み出し物事を決定する男性」が世の中を回し、「それ以外の人」は彼らに合わせて生きるものとされてきた仕組みはもう、とっくに機能しなくなっています。組織も地域もデザインし直すことが必要なのです。でもどこも硬直化して、変化できなくなっています。その最たる例が議会です。
男性優位の日本の組織で40〜50代まで苦労を重ねて働いた女性は、そんな男だらけの日本の議会に切り込むスキルを持っているはずです。議員の本業は光の当たらないところにも目を向け、社会をより暮らしやすくするという大事な仕事ですが、政治は権力闘争の場でもあります。上意下達や忖度や、誰それのメンツやあちこちへの根回しや、足の引っ張り合いと無縁ではいられません。それは多くの組織でも不可避のものでしょう。私のようにそれら一切合切が極めて不得手で全く順応できなかった人間はこうやって組織を離れて一人で好き勝手なことを書き散らすしかないですが、複雑な人間関係と組織の理屈の掛け算を賢くサバイブしてきた人は、その能力をぜひ組織の外でも活かしてほしい! そう、最も旧態依然とした議会という場所を変えるために。そんな女性が世代を超えてあちこちに仲間を増やせば、思ったよりも早く時代は変わるのかもしれない。この永劫不変のように見えるおっさん社会の砕氷船になれるのは、ミモレ世代の女性かもしれないと思います。バリバリと厚い氷を割って進み、女性の政治への参入障壁を減らして、若い人に道を拓くのです。
ちょっとやそっとの茨の道では傷つかない、経験豊かな大人の女たちが若い世代と連帯し、ジェンダー格差大国ニッポンを変えることができたら。生きている間に、いろんな年齢、いろんな経歴の女性議員たちが生き生きと活動している世の中を見たい。いつかこのエッセイを「あの頃の私はずいぶん悲観的だったんだな!」と呆れながら読み返す日が来ることを願います。
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