平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
お隣のあの人の独白に、そっと耳を傾けてみましょう……。
第18話 見られている
そのショートメールは、会社のランチタイムがもうすぐ終わるというときに届いた。
セットのコーヒーをせわしなく流し込みながら、片手でスマホのメッセージを開く。宅配業者から「冷凍宅急便が届いているけれど不在でした、再配達登録を24時間以内にお願いします」と書いてある。
――もう、お母さんたら、まーたナマモノ送ってきたのね。
私の故郷は北海道。漁港がある町で、母は時折、とても東京で一人暮らしをしている私には食べきれないほど大量の魚介類を送ってくる。ほかに何も言わずに冷凍便を送ってくるような知人は思い当たらない。何にせよ、生ものがダメになったら大変。
リンクをクリックすると、大手宅配業者のサイトが表示された。名前と郵便番号を入力して送信、次のページに変遷したところで、その下にずらりとならぶ空欄にげんなり……。
――公式LINEのトークからだったら、住所とかすでに入力してあるはず。仕事終わったらそっちからやろうっと。
午後の始業、13時の5分前で気が急いていた。私は慌ててお会計を済ませて、足早にオフィスに戻る。勤続10年でも、1分単位で管理される会社員の哀しさよ。
……ところが私はこの日、新人歓迎会があったこともあり、すっかり再配達の依頼を忘れてしまった。しっかりしていてキレイなお姉さん、なんて会社では言われることもあるが、中身は極度のずぼらで面倒くさがり。
母からだと思い込んでいたが、送り返されてしまったであろう宅配便は誰からのものだったのか……。確かめることもできないまま、私はがっくりとため息をついた。
平穏な毎日に潜む、恐ろしいシーンをのぞいてみましょう。
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