誤解④「身体醜形症」は「整形すれば克服できる」ものではない
「自分は醜いから何とかしたい」という気持ちにとらわれている人が真っ先に向かうのは、美容外科です。
ただ、実際に形成外科医や美容外科医が診ても、あなたのその悩みは「ほとんど目立たない」あるいは「手術の適応がない」ものですから、安易に手術をしてしまうと、逆に気になっていた部分へのとらわれが強くなるリスクがあります。
変化を望んでいたはずなのに、いざ変化するとやっぱり何か違う。「こんなのは自分じゃない」とつぎの「欠点」を探しはじめるきっかけとなり、整形依存への一歩を踏み出してしまうことにもなりかねません。
実際には、美容外科医の技術的な過誤や未熟さのせいで、予想外の結果となってしまうこともあります。
多くの悩みや訴えの背景にあるのは、整形して得られたものが術前に思い描いたバラ色の変化ではなく、そのギャップに悩む自分自身の苦悩です。そしてこの苦悩は、顔へのとらわれを必ずと言っていいほど悪化させます。
身体醜形症は「見た目」を気にする病気ですが、本質はこころの病です。
外見の小さなコンプレックスが、こころの病の引き金になってしまうこともあります。ですから、人の目にはなかなか判別できないようなわずかな変形やゆがみも見逃さずに、こころと並行して「見た目」のコンプレックスの解消方法も探っていく必要があります。
顔のコンプレックスもこころのコンプレックスも、その重みはどちらも変わりません。文字通り、心身は一体だからです。
『自分の見た目が許せない人への処方箋 こころの病「身体醜形症」の治し方』
著者:中嶋英雄(なかじま・ひでお) 小学館 1760円(税込)
自分の顔が嫌いでたまらない。顔が気になって何時間も鏡を見つづけてしまう。メイクや髪型の崩れが気になって仕方ない。人に会うと顔を評価されている気がする⋯⋯そんな人は「身体醜形症」かもしれません。SNSの普及でかつてないほど「顔」に注目が集まる時代、誰でもなる可能性があるこころの病「身体醜形症」の元を知り、自分を好きになるための解決法を元形成外科医の精神科医が提示する。
著者プロフィール
中嶋英雄(なかじま・ひでお)さん
精神科医、形成外科医。1973年慶應義塾大学医学部卒業、同年形成外科学入室。日本精神神経科学会会員、日本形成外科学会会員、同評議員、理事歴任。日本頭蓋顎顔面外科学会会員、評議員、理事歴任。日本頭蓋底外科学会設立委員、名誉会員。日本脳神経外科学会、日本解剖学会などの会員。1983年慶應義塾大学医学部形成外科学専任講師、1988〜2010年同助教授、准教授、2010年から精神科に転科し群馬病院勤務。現在は美容整心メンタル科を掲げ、身体醜形症、不安症などの神経症、整形依存、パーソナリティ障害の治療をクリニークデュボワで対面診療を、美容整心メンタルクリニックで遠隔診療をおこなっている。著書に『ほんとうに美しくなるための医学』(アートデイズ出版)がある。
構成/大槻由実子
Comment