シスターフッドだけでは問題は解決しない


——オール・ノットには、シスターフッド(女性同士の連帯)だけでは問題は解決しないというメッセージが込められていると聞きました。

柚木麻子さん(以下、柚木):少し前に書いた小説『らんたん』(小学館)を刊行した時に、ありがたいことにたくさん取材をしていただいたんです。その時、一部の方に「シスターフッドで解決しますよね」「フェミニズムや女性の連帯で日本のこれからの問題も解決しますね」って結構言われたんです。それを聞いて、ちょっと「え?」と思って。

本来は全員で解決しないといけないことなんですよね。確かに『らんたん』では津田梅子が女性が教育を受ける道を一人で切り開いたことを肯定的に書いたんですけど。あまりにも明治と同じで国は何の保障もしないし、教育格差もあるなか、女性同士の優しさで全部解決しますよねって、大手のメディア、しかも男性から言われると「んん?」と思うことがいっぱいあって。「シスターフッドはよきこと」ベースでは書いていきたいな、とは思っているんですけど。

「シスターフッドで性暴力は解決しますね」に作家・柚木麻子が感じたモヤモヤ。連帯が成功しなかった「その後」にあるもの_img1

 

——シスターフッドへのフリーライド(ただ乗り)という問題を身をもって感じていらっしゃる、ともお聞きしました。

 

柚木:昨年、映画業界の性暴力撲滅を訴えるステートメントを、映画化された小説の原作者からの立場で、作家仲間たちと出したんです。原作者というのは、名前こそ一番最初に出るけど、映画業界のしがらみからは自由な立場だと気づいたんですね。「性暴力反対」と言うと、だいたい何かしら絡まれるのに、三浦しをんさんや湊かなえさんなど大御所も参加したせいか、ステートメントに対して誰からも何も言われないという状況になって。

それは良かったのですが、ステートメントを出したことで、ここでも「シスターフッドの力で性暴力は解決しますよね」と言われるようになって。「いやいやいや、そうじゃない」と。当事者ではない周囲の人から「女の人がどんどんやればいい」、「手弁当で、ほら、やって!」みたいにあまりにも言われるのはおかしいんじゃないかと思うんです。