——エンタメの中のLGBTに悪い人がいないってことですよね。都合よく感傷的にさせてくれる存在として描かれがちというか。

「シスターフッドで性暴力は解決しますね」に作家・柚木麻子が感じたモヤモヤ。連帯が成功しなかった「その後」にあるもの_img4

 

柚木:応援したいと思わせてくれる人じゃないといけない、というのがどっかにあったんだと思うんです。自分の中にすごく偏見があったことに気づきました。

例えば最近でも「夫であることがつらい」とコメントして離婚したりゅうちぇるさんが勝手だと叩かれていますけど、勝手であることとジェンダーに違和感があることは切り離さないといけない。そこが混同されていると思います。

 

——経済的にずっと苦労してきた真央からしたら、名家の出身である四葉さんやミャーコはすごく恵まれているように映ると思います。真央はその文化や余裕の違いを敏感に感じ取っていますよね。だからといって壁を作るでもなく、バックグラウンドの違いを超えて一緒にいられている。

柚木:ミャーコは真央ちゃんのことを気に入っているけれど、真央が置かれた状況を想像できているわけではない。でも、失敗をしていて時間があって文化的素養がめちゃくちゃあって、そして生活の不安がないミャーコじゃないと、真央と四葉さんたちの、このオール・ノットの真珠は繋げない。ミャーコがいるからうまくまわっているんだと思います。

あれだけやりたい放題なのに別に親切でもない。真央に構ったのも元カノに似てて甘酸っぱい気持ちになったから。一等地に持ち家があって、経済的にバリバリに安定しているから、あれだけ自由にやれるんですよ。

——ミャーコが絵を書き続けられたのも、経済的に恵まれているからですよね。花開く前に経済的な理由で諦めてしまう人もいる。

柚木:恵まれているんです。恵まれている上に性格もあんまりよくないんです。ミャーコは最後まで反省しないし、楽しく生きて罰されず、今日も絵をかいてふがふがしているといいな、って。でも、同性愛者だからやっぱり結婚できない、ひとりで死ぬんだっていうのを人より意識してなきゃいけないっていうところはあるんです。

——「ミャーコちゃんみたいないい加減な子にこそ、公的に守られる制度ってたぶん必要なのよね。いい加減な女と男でもさあ、結婚するとなんとかそれなりに形になるというか、生き延びられるみたいなところあるじゃない」というセリフ、すごく考えさせられました。

柚木:そう、いっぱいいるじゃないですか。結婚制度があるから、なんとかなっている人って。