シニア向けのローン「リバースモーゲージ」とは
由紀さんがご友人から聞いたという「リバースモーゲージ」は、持ち家を担保に金融機関からお金を借りられるシニア向けのローンです。
1980年代、自宅はあっても生活資金が足りない高齢者のために一部の自治体が始めた融資制度で、のちに民間金融機関で商品(リバースモーゲージローン)として扱われるようになりました。自宅は担保に入れるだけなので、本人はそのまま住み続けられ、借りたお金は老後の生活費や高齢者施設への入所一時金など、生活資金に充てられます。銀行などの金融機関が取り扱っており、対象となる物件や貸付限度額は商品によって異なります。
融資の額は契約時の不動産評価額に応じて決められ、評価額の50〜80%が上限となっています。生きている間は毎月利息のみの返済で、元本の返済は死亡後に担保不動産の売却または相続人が現金一括で返済。現金一括返済の場合は、親(借入人)の死後も自宅を手元に残すことが可能です。
リバースモーゲージの最大の特徴は、月々の返済は利息のみなので負担が少なく、契約後も自宅に住み続けられる点でしょう。親の存命中から、亡くなったら自宅を明け渡すことが決まっているので、面倒な空き家問題に発展せずに済む点もメリットの1つかもしれません。
利用する際のデメリット
ただしリバースモーゲージにはデメリットもあります。当然ですが、家の価値を超える借金はできないので、想定を遥かに超えて長生きしてしまった場合は、借り入れした資金では生計が成り立たなくなるリスクも。
また、土地や建物の価値が下落すれば、融資限度額が見直される可能性も考えられますし、金利が上昇したら当初の想定より高い利息を払うことになります(金利はそもそも普通の住宅ローンに比べて高く設定されています)。親の死後、実家を売るタイミングになって「借入額以下でしか売れない=相続人(子どもなど)が不足分を負担しなければならない」という事態も想定しておいてください。
対象地域は首都圏や関西圏、地方の主要都市に限られているケースが多く、マンションを対象外としている金融機関もあります。その一方で、最近はより幅広い物件に対応し、リスクを軽減できる仕組みも出てきました。
リスクの軽減という観点から見ると、60歳以上の方向けの「リ・バース60」がよく知られています。こちらはリバースモーゲージの仕組みをベースにした「リバースモーゲージ型住宅ローン」で、99%の方が選ぶというノンリコース型にすれば、契約者(配偶者も含む)の死後、債務は子どもに引き継がれません。担保住宅の売却代金が借入金額を下回った場合でも、住宅金融支援機構の保証があるため不足分が請求されない仕組みになっているのです。
制度導入の2017年度以降、これが支持され急速に利用者が増加しています。ただしこちらで借りたお金は、リフォームや住み替え、高齢者向け住宅への入居一時金など、住宅に関連する使途にしか利用できません。
低所得の高齢者向けの「不動産担保型生活資金」も
今回の相談者・由紀さんのご実家には当てはまらないと思いますが、低所得の高齢者世帯には「不動産担保型生活資金」という制度も用意されています。所有する自宅に住み続けることを希望する低所得の高齢者世帯に対し、その不動産(土地・建物)を担保に生活資金を貸付ける制度で、公的なリバースモーゲージとも言われています。
「世帯の構成員が原則として65歳以上であること」「借入世帯が区民税非課税程度の低所得世帯であること」などが条件で、対象不動産は「土地の評価額がおおむね1500万円以上の一戸建ての住宅(集合住宅は不可)」。他にも細かい決まりはありますが、すべての条件を満たせば月に最大30万円まで交付されます。
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
前回記事「7戸に1戸が空き家の時代、年間20万の維持費がかかる空き家の実家をどうする!?」>>
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