愛情に触れて病床で幸せな気分になってしまった


——劇中では自由奔放に生きる賢治に手を焼く政次郎の姿が描かれましたが、賢治の父親に対する感情を菅田さんはどのように理解していましたか?

菅田:お父さんは実家の質屋を継いだのですが、一方で地域の人たちに貢献したいという気持ちの強い人だったそうです。そこは賢治も一緒で、父親の言うことを聞かず好き勝手に動いているように見えるけど、農民の生活向上を目指す協会を立ち上げたりしているんです。それは政次郎さんの生き方を尊敬していた証拠なのではないかと思います。

菅田将暉「親バカは子どもにとっての幸せでもある」尊重してくれた父、自身が思い描く家族の愛_img2

——役所広司さんと共演した感想を教えてください。

菅田:楽しかったです! 言葉のキャッチボールが気持ち良く続いていく感覚って、日常生活の会話でもなかなか味わえないじゃないですか。でも役所さんは懐が深く、どんなボールを投げても僕の意図を汲み取りながら、絶妙なボールを返してくれるんです。だからワンカットの長いシーンも集中力が途切れずに演じることができましたし、役所さんのエネルギーに呼応することでキャストもスタッフさんも全員が自然と一致団結できたような気がします。

 

——政次郎は娘のトシが結核を患って亡くなってしまい、やがて長男の賢治も病気になってしまいます。周囲に親バカと冷笑されても子どもたちに寄り添う政次郎は、今の時代でも受け入れられやすい“理想の父親”に見えました。

菅田:病床で政次郎さんが賢治に寄り添うシーンがあるのですが、その深い愛情表現を受け取って、賢治を演じながら僕は幸せな気分になってしまったんです。親バカと言われても気にせず献身的に自分を支えてくれる人がいるのは、こんなにも幸せなのかと。そして、個人的には劇中で描かれる宮沢家のコミュニケーションに共感しました。会話が多くて、良いことも悪いことも全員で共有して、全員で考える感じが素敵だなって。まさに理想の親子ですね。