この日のお召し物はすべて私服。黒革のジャケットは、もう30年以上着続けているという藤竜也さん。現在81歳。ピンと伸びた背筋から、今もしっかりと鍛えていらっしゃるのが伝わってきます。

 

まさに、年齢を重ねてもカッコいい男の代表格。けれど、そうお伝えしても当のご本人は「困りますねえ」と照れ笑い。そんなシャイなところもまた古き良き男の美学を感じます。

1962年に芸能界入り。芸歴は60年を超えました。そして、80代を迎えて最初の主演映画『それいけ!ゲートボールさくら組』が5月12日に公開。

“理想の80代”である藤さんに、いい男の条件、常に若々しくあり続ける生活のヒント、愛される夫であり続けるための心がけまでたっぷりとお話しいただきました。

 


カッコよさの秘訣は、石原裕次郎さん譲りのマインドとトレーニング


――まずは藤さんが思ういい男とはどんな人かから伺えますか。

それはやっぱり石原裕次郎さんだなあ。石原さんには生まれついての明るさがある。暗い雰囲気がないんですよ。不思議ですよね。大病をなさって、決して長くない人生だったけど、いつも人を明るくしてくれて、そばにいると心が温かくなる。ああいう方はいい男ですよね。

――では、藤さんも後ろ向きなことは言わないなどといった心がけをされているんでしょうか。

できればそうしたいですね。あと、石原さんからは人に対するリスペクトを感じました。僕みたいな若造にもね、ちゃんと人として見ているなと感じられるところがありました。明るさと、人へのリスペクト。この2つは大事なことだと思います。

 

――そんな藤さんの主演映画が間もなく公開されます。シニアの俳優を主演に映画がつくられることがなかなかない日本の映画で、81歳で主演を務められることがすごいなと思います。

ありがたいことですよ。ひとえに体が丈夫だからね。

――日頃からトレーニングはどんなことをされているんですか。

前まではね、自由が丘のスポーツクラブにも通っていたんだけど、それもコロナでやめちゃったから、今はもうウォーキングぐらいですかね。合間に、鉄棒にぶら下がって懸垂をやってみたり、ベンチを使ってちょっと腕立てしたり。体を整えておかないと、とてもじゃないけども、1本の映画を乗り切る自信がないですからね。

――藤さんの若々しさは、やはり体づくりにあるんですね。

僕は出が日活映画で、当時は日活がアクションをいちばんたくさんつくっていた時代。と言っても、最初から石原さんみたいなことがやれるわけではないので、階段から落ちたり、橋げたから運河に飛び込んだりしてて。そのためにはやっぱりトレーニングをしないと。階段落ちなんてのも技術があって、コロコロと丸くなってね、身を任せりゃそんなに痛くはないんだけど、それでもやっぱり多少筋肉がついてないと痛いですからね。怪我しないようにトレーニングをしてたら習い癖になって。

そこから30(歳)を過ぎてテレビでアクションものをずいぶんやらせてもらったんですよね。刑事物っていうのかな。拳銃持って走り回るのね。しかも走って車を追いかけるんです(笑)。嘘だろうと思うんだけど、やれと言われたらしょうがないから突っ走るわけですよ。そんなことをやってたからか、今でも体を動かすのは全然億劫じゃないですね。

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