初演を終えたときはジョンの声から元に戻すのに時間がかかった


――再演が決まったときから、準備されていたことは?

加藤:稽古までにやってきたのはバンドの音作りです。これが、クオリティ上げ過ぎてもダメなんです。ひとつひとつをもっとバンドっぽくしていくということですね。

あと、僕がジョンの歌声になるというのも芝居が入って来ないと、作れない。ただ歌うだけになってしまうので、すべては石丸さんの稽古の中で作っていくものなので、基本的には“心構え”だけでした(笑)。

若きジョン・レノンは「心の揺れがバレバレで、物事を深く捉えない」加藤和樹がその声から感じ取った繊細さ_img4

 

――初演時には「歌のシーンが怖かった」とおっしゃっていましたが。

加藤:そうなんです。ジョンの歌い方はかなり喉に負担がかかる歌い方で……。だから、いつ喉がつぶれてもおかしくない。声帯も筋肉なので、ずっとその歌声を続けることで、その状態で筋肉が固まってしまいます。初演が終わったとき、しばらくはジョンの声のままで、そこから戻るまでに時間がかかりました。

でもそういったことを恐れて「再演をやらない」という選択肢はなかったので、今回かなりの覚悟を持って再演に臨んでいます。それくらいジョンという人間を表現するのは容易なことではないというのは、演じている僕しか分からないと思うので。

 

――前回の上演時には、何か喉のために特別なケアをされたんですか?

加藤:いつも以上にケアはやりましたね。いつもやっている吸入はもちろんですが、病院から処方されている薬も飲みながら……。普段のケアだけでは追いつかないくらいの酷使具合だったので、終わったらすぐに冷やすとか。

記者会見のときも歌わせていただきましたが、まだあのときはジョン・レノンにはなり切れてない感じでした。歌だけでなく、やはり芝居の流れで歌のパートに入ることで、自然とジョンの声のポジションになるんです。面白いもので、感情がしっかり乗っかれば声って潰れたりしないんですよ。でも歌声っていうのは無理に出すこともあるので、やはり喉を壊すことなく乗り切りたいです。

――加藤さんはお料理が上手で、楽屋にも手作りのお料理を差し入れすると伺いました。初演のときはどんな差し入れをされたんですか? それは“喉対策”的なところもありますか?

加藤:初演のときはビートルズメンバーの5人でうちに集まって、ラーメンを作って食べたりしました。喉にいいモノとかを考えているわけではなくて(笑)、とりあえず、何か自分で作ったものを持っていく感じです。お肉系が多いんですよ。タンドリーチキンとか、チャーシューとか。自分でイチから作りますよ。