自分を愛してこそ、余裕が生まれ、誰かを心から愛することができる


——「利己的でも大丈夫」は、「もう少しわがままになっていい」という言葉が印象的なエッセイです。どんな気持ちでこの文章を書いたのでしょうか。書くきっかけとなった出来事が何かあったのでしょうか。
 
ソン:10年前は、20代後半から30代のはじめでしたが、当時のわたしは、わがままになれなかったんです。やりたいことややらなければならないことがたくさんあって、一生懸命前だけを見て走り、周りの人との関係にも気を使いながら生きてきた。でも、一生懸命やってもうまくいかないこともありますよね。人間関係で傷ついたり。だから、自分を愛する方法について深く考えるようになったんです。「利己的でも大丈夫」というのは、本当に利己的という意味ではないですよね。自分を愛してこそ、余裕が生まれ、誰かを心から愛することができるということ。ある瞬間、そのことに気づいてから、「ああ、自分を愛する方法を知らなかったからうまくいかなかったけど、少しずつ努力して自分を大事にする方法を学んでいこう」と思うようになったんです。
 
自分と誰かを比較していたんです。SNSを見ると、「あの人は幸せそうなのに、わたしはどうしてこんなふうなんだろう」と。でも、考えてみたら、それぞれの生き方は違って当然だし、幸せそうに見えても実際はどうかわかりません。それなのに、自分を責めてばかりいたんです。当時もそうだったし、今でも時々……。

 ——本書に掲載された「明日が恋しい今日」に、「過去に戻れるとしたら、いつがいい?」という質問があります。今、ソンさんが過去に戻れるとしたら、いつが良いですか?
 


明日が恋しい今日
「過去に戻れるとしたらいつがいい?」
という友だちの質問に、
「27歳」と答えた。
あのころの自分が一番きれいだったと思うから。
だけど、当時のわたしは
人生の重さに耐えかね
叶うことのない愛に苦しみ、
子ども時代を懐かしがっていた。

今では再び戻りたいと思うほど
幸せな日々だったのに、
27歳のわたしは
自分の美しさや輝きに気づいていなかった。

10年後、20年後にまた同じ質問をされたら
「今、この瞬間が愛おしい」と答えるだろう。

今日が幸せでない人は
明日も幸せではないという。
今この瞬間をせいいっぱい、
幸せに生きたい。

(『あなたを応援する誰か』より抜粋)
 

ソン:今が一番いいと思っています。もちろん、昔よりも年齢が高くなっていますが、それだけ経験を積み、まだまだとはいえ、人生について少しずつ理解できるようになっているのが、とても楽しいです。少し前に結婚したのですが、夫と時々こんな話をします。そのたびに、今の瞬間が一番いいね、って話しているんです。年を重ねたら、賢いおじいさんとおばあさんになりたいね、って。明日が恋しい今日は今のことだし、明日の私も今のように、その瞬間が一番好きならいいな、って思っています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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韓国では本をプレゼントする習慣があり、『あなたを応援する誰か』を贈った/もらったというSNS投稿も多数アップされています。

——10年前のご自身に、いまかけたい言葉とは。

ソン:今回のインタビューを前に、久しぶりに『あなたを応援する誰か』を読みながら、つらかったこと気づきを得たことなど、かつての感情を思い出しました。同時に、当時はそういう風に思うしかなかったという限界も感じました。今、わたしが10年前の自分に話しかけるのであれば、もっと多くのことを語れると思います。でも、過去のわたしは経験していなかったから、深く考えることができなかったのです。

本書の後に別の本を出したのですが、そのたびに成長の跡が見えると思います。本を書きながら、人生を振り返り整理することができました。もちろん、今もっと多くのことを知っているので、たくさんのことを語りかけられると思いますが、当時のわたしは一生懸命考えて書いているので、それだけでもいいと思います。