今回のスガハラさんとの別注フラワーベースでコラボレーションいただいた、フラワースタイリストの平井かずみさん(右)とスタイリストの福田麻琴さん(左)。モノ作りの現場を拝見しに、スガハラの工房へ。

都心から車で約一時間半、心地よい海風が吹き抜ける千葉県九十九里にあるスガハラの工房。昭和7年に東京・亀戸で創業した「菅原工芸硝子」がこの地に移って来たのは、今から約50年以上前。
今も変わらず、手仕事によるガラスづくりにこだわり、生活のさまざまなシーンに寄り添うガラスの製品を作り続けています。

今回スガハラさんとミモレ別注の花瓶を製作するにあたり、そのモノ作りの現場を拝見すべく、平井さん、福田さんとご一緒に工房を訪ねました。

穏やかな空気が流れる工房の敷地内には、春にはたくさんの桜が見事に咲くそうです。

“美しくなる一瞬”を逃さず捉え、カタチにする

工場内中央にある炉の中ではガラスの原料を溶かします。
この日は真冬でしたが、室内は汗ばむほど。ガラスを扱う職人の皆さんは半袖で作業される方も。夏であれば室温は50℃近くにもなるのだとか。

工房の中央にある炉の中では、24時間365日、ガラスの原料を溶かしています。 熱のパワーが凄まじい炉の中の温度は約1400℃! 涼やかな美しさをもつガラスのイメージからは想像のつかない、熱い現場です。

この道50年以上という、熟練の技を持つ親方。繊細な造形を担当されていました。

炉の中で熱されて溶けたガラスは、取り出した瞬間から徐々に固まっていき、約600℃で冷え固まります。季節やその日の天候によっても影響を受けるほど繊細なガラスは、完全にコントロールすることはできません。そのため、取り出した瞬間から、ガラスが最高に美しくなる一瞬を逃さず捉えてカタチにするのが、職人さんたちの技術の賜物。シンプルなデザインほど、いかに手数を少なく作るか、が重要なのだそう。

息を吹き込みガラスに形を宿す

ガラスに息を吹き込み、さまざまな形を生み出していきます。
ひとつの製品は、それぞれ4~5名のチームのリレー形式で効率よく進められていきます。自分のペース以上に、チーム内のあ・うんの呼吸が大事なんだそう。

ひとつひとつハンドメイドではあるものの、製品として定められた規格で作るには、長年の経験を積む必要があります。 職人さんたちは、その手や身体の感覚で、同じデザインのカタチをひとつひとつ丁寧に生み出していきます。

花瓶のデザインを職人さんと相談

ファーストサンプルを元に、平井さんの長年の経験で導き出した“使いやすい花器”について、職人さんとデザインを微調整していきます。
ご相談させていただいたのは、東京都指定伝統工芸士に認定された職人・松浦 健司さん。枝を挿した時のベストな高さについても想像しながら、サイズを決定。
最終的には写真のような型に差し込んで成型します。工房にたくさんストックされた型はブランドの財産です。

ファーストサンプルをもとに、さらに微調整を重ねていきます。「底の厚みが少ないほうが、水を入れて重くなっても扱いやすく、また花をいけた時に綺麗に見える」という平井さんのご意見をもとに、底の厚みを少し薄くすることに。実際に厚みを少なくしながら吹くのは、非常に高度な技術が必要だということでしたが、松浦さんにご快諾いただけて安心するミモレストアチームでした。

手仕事の温もりとシンプルな美しさ

ファーストサンプルがこちら。陽の光を受けて佇む姿は、それだけで静謐な美しさが溢れます。

1点1点、熟練の職人の手仕事で作られるスガハラのフラワーベース。ボトル型とバケツ型、それぞれのサイズにもこだわり、長く愛せる使い勝手のよい花瓶が出来上がりました。ぜひご自宅で長くご活用いただけると嬉しいです。

撮影/坂本美穂子
構成・文/ミモレ編集部