「根本」と「いつでも戻れる場所」を行き来するように
――彩吹さんはミュージカルに留まることなくストレートプレイ、朗読劇などにも出演される中、コンサートも定期的に行われています。そして佐藤さんはLE VELVETSの活動と並行して、ミュージカルにもたくさん出演されています。
彩吹:ストレートもミュージカルも歌単発のお仕事もすべて経験することで、私の将来の舞台や仕事に繋がっていくものなんです。でも根本的に「どうして歌うのか」と聞かれれば、「歌が好きだから」という理由なんですけど(笑)。芝居には必ず“歌唱”が、そしてミュージカルやコンサートといった歌メインの舞台には必ず“芝居”が必要だと考えています。芝居心がないと歌えないというか……。
例えば、3分とか4分の歌の中にはきちんと起承転結と物語が存在しています。舞台が2、3時間だとしても、その中に詰まっているドラマ性は“歌の構成”と一緒だと思うんです。だから、両方やっておかないとダメだなって。不思議なものでミュージカルの舞台では意外とお芝居がおざなりになったりすることがあって。それは音楽に引っ張られてしまうからなんです。
佐藤:僕はこの歳になって、改めて自分を“歌手”だと思うんです。歌っているときがとにかく楽しい! 特にひとりで1曲をどう歌うかを研究しているとき。同じ曲をずっと何度も何度も1時間くらいループしながら、「ここはもっとこうできる」と探っていくのが楽しくてしょうがないんですよね。そういうのを感じたときに「僕の根本は、歌手なんだ」と感じます。
ただ、ミュージカルに出演することでめちゃくちゃ刺激を受けたのも事実です。それまでは“いい発声”“いい声”というものが頭の中にずっとあったのですが、人の心はそれだけでは動かないというのをミュージカルから学びました。時には“いい声”ではないほうが人の心を打ったり、時には声を崩したほうが心に響いたり、語りかけるような歌い方のほうが良かったり……。そういった表現方法をミュージカルから学ばせてもらっています。
とはいうものの、ミュージカルに出演しているときに「歌だけの人だね」と思われるのは、お客様に失礼だと思うので、来てくださった皆さんの心が少しでも動くようにというのを常に考えています。『LE VELVETS』は僕にとって未来を作ってくれたグループであり、ホームであり、母体。いつでも戻れる場所という感じです。
彩吹:そういう場所があるのはいいね。今回セットリスト作るためにYouTubeなどでJ-POPを調べながらずっと歌っていて、やっぱり歌うことが好きだなって改めて思いました。前に鳳蘭さんと共演させていただいたときに、「歌は年を取ってもやっていけるから、ずっとやり続けないとアカンで!」と言われたんですよね。その言葉もずっと心の奥に残ってる。だから歌い続けていきたいですね。
エンタメ業界だけではなく、飲食業など、本当に全世界がコロナ禍の影響を受けました。公演中止が続いたときは、歌や自分がパフォーマンスすることが「本当に必要なのか」と舞台に関わる人なら誰しもが思ったんじゃないかと思うんです。もちろん、私が歌を好きだから「歌うのだ」という強い思いはありますが、この苦しかった3年間で学んだことや経験したこと、湧き出た感情などはコロナ禍でなければ気付かなかったことばかり。ずっと生のライブを待っていてくださった方、エンタメを必要としてくださる人がいらっしゃるんだという自信もついたので、これからもそれを信じていきたいと思います。その恩返しではないですけど、信じて待ってくれていてくださった皆様のためにも、これからまた信じて突き進んでいきたいと思っています。
佐藤:本当にそうですよね。
彩吹:今回のコンサートは自分のバースデーコンサートではありますが、お客様が生まれてきてこの会場に来てくださるからこそ“一期一会”が生まれるんですよね。皆さんも生まれてきて良かったな、そして出会えて良かったなという気持ちになれるコンサートになったらいいなと、そう思っています! しかも、私だけじゃなくてバンドメンバーは全員6月生まれなんです。あ、シュガーは違ったよね……(笑)。
佐藤:ええ? そうなんですか。僕も2020年はコロナ禍で『エリザベート』が全公演中止になり、かなりの衝撃を受けました。自分が観客になったときにいつも思うのですが、何かを観て、感動して心が動いたら、また観に行きたい!と思うじゃないですか。そうだな……、例えば、美味しいラーメンも一緒。美味しいラーメンを食べて感動したらまた食べたくなるけど、お店の人がどれだけ「美味しいよ」と言っても、自分が感動しなかったら次に足を運ぶことはないと思うんです。
どんなに「芸術は良いんだよ」「素晴らしいんだよ」と口で言っても、それを観にきたときに本当に心が動かないとまた来ようとは思わない。だからコロナ禍が終わってお客様が戻ってきてくださったときに、“真の感動”を感じて帰ってもらうためにどうしよう、どう自分を磨こうかとずっと思っていました。だから僕は劇場こそすべてで、表現する場こそがすべて。これに尽きると思っています。このコンサートに足を運んでくださったお客様が僕と彩吹さんの歌を聞いて、感動して、また聞きたい!って思って帰っていただけるよう、そんなステージを作りたいですね。
彩吹:シュガー、ありがとう!! 楽しいコンサートにしたいと思います。シュガーとのデュエット、私自身も楽しみだし、お客様も楽しみにしていてください!
<インフォメーション>
MAO AYABUKI SONG BOOK 2023
【出演】彩吹真央
大貫祐一郎(音楽監督・ピアノ)、森田晃平(ベース)、堀倉彰(キーボード)、坂上領(フルート・EWI)
【ゲスト】佐藤隆紀(LE VELVETS) ※両公演に出演
【日程】2023年6月10日(土)15:00開演 /18:00 開演 ※開場は開演の45分前
【会場】I’M A SHOW
[東京都千代田区有楽町2丁目5番1号 有楽町マリオン(有楽町センタービル)別館 7F]
【チケット料金】全席指定:9000円(税込)
※未就学児入場不可
※入場時、別途ドリンクチャージ代600円を頂戴します。
【問い合わせ】サンライズプロモーション東京:0570-00-3337(平日12:00~15:00)
公式HP:https://sunrisetokyo.com/detail/22171/
ビジュアル撮影風景・コメント動画:https://youtu.be/4DvwDVhpCJo
撮影/shitomichi
ヘア&メイク/高松由佳
取材・文/前田美保
構成/坂口彩
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