高齢者の運転はこれだけ危険!


メディアでも度々報道されているように、75歳以上の高齢運転者は他の世代に比べてブレーキとアクセルの踏み間違いによる死亡事故の割合が高く、ハンドルの操作不適と合わせると30.1%が操作不適による事故となっています。

また、警察庁の集計によると、2018年に交通死亡事故を起こした75歳以上のドライバーのうち、約半数にあたる49.2%が「認知症の恐れ」か「認知機能低下の恐れ」の判定を受けています。

75歳以上のドライバーは免許の更新時に認知機能検査等を受けなければならないことになっていますが、認知症と診断された場合、二度と運転はできません。認知機能検査で「認知症のおそれがある」と判定された場合は公安委員会(警察)から連絡があり、その後医師に認知症と診断されると、聴聞等の手続きを経た上で「免許の取消しまたは効力の停止」を受けることになるのです。


どうしても運転が必要な方はサポカーで


高齢者の運転は危険だということは分かっていても、今回の相談者・由美子さんのように、高齢になったからといって免許を取り上げるわけにはいかない事情もあります。それまで車中心の生活をしていた方は、足がなくなり死活問題にもなりかねません。そこで歳を取っても運転したいという方に提案したいのが、安全機能がついた車の導入です。

「サポカー」という言葉を聞いたことはありますか? セーフティ・サポートカーの略で、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)が搭載されている安全運転サポート車のこと。衝突被害軽減ブレーキに加え、ペダル踏み間違い急発進抑制装置、車線逸脱警報、先進ライトなどを搭載した車は「サポカーS」と呼ばれ、高齢運転者に推奨されています。

 

高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、政府は官民連携でサポカーの普及啓発に取り組んできました。2021年11月には、国内で販売する乗用車などの新型車に対し、「衝突被害軽減ブレーキ」の搭載を義務化。「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」の標準装備化も進んでいます。そして2022年5月以降、AT限定ならぬ「サポートカー限定免許」も始まりました。対象車両はこちらで確認することができます。

なお、サポカーはわざわざ買い替える必要はありません。所有している車にサポカー機能を後付けできる場合もあるので、その場合は本体価格と取り付け費用を合わせても5万円程度で済みます。

サポカーを紹介するこちらのサイトでは、高齢になってもできる限り運転し続けるという前提で、サポカーについてのあれこれが紹介されています。こちらを見ながら一度検討してみてはいかがでしょうか。

 

高齢者には運転診断サービスも


サポカーの導入を検討すると共に、欠かせないのが定期的な検診の受診です。認知症の初期症状や視力低下が出てくると、当然車の運転にも支障をきたします。認知症や視力検査などは定期的に行ってください。

一般社団法人高齢者安全運転診断センターでは、事故につながる運転の癖を洗い出す運転診断サービスを行なっています。料金は内容によって異なり、9900円、27500円、38500円の3タイプ。送られてくるドライブレコーダーキットを普段運転している車に設置するだけで、簡単に診断を行ってくれます。

親御さんがどうしても運転を続けたいという場合は、一度このような診断を受けてみて、結果を踏まえて話し合うというのも1つの手ではないでしょうか。

また、嫌がるかもしれませんが、高齢者マーク(もみじマーク・四つ葉マーク)も忘れず付けるように促してみてください。道路交通法では、70歳以上の運転者に対して、高齢者マーク(高齢運転者標識)を表示する努力をするよう決められています。取り付ける場所は、周囲の車の運転者が見やすい位置(車体の前面と後面に1枚ずつ、地上0.4m以上、1.2m以下)が推奨されています。

ご存知の方は少ないかもしれませんが、高齢者マークを付けた車に幅寄せや割込みをした運転者は、5000〜7000円の反則金を支払わなければならないことになっています。マークを付けて高齢運転者であることを周囲に示し、配慮してもらいましょう。それと同時に、せめて事故の危険性が高まる雨の日や夜間、子どもの通学時間帯は運転しないと決めて、リスク回避をすることは必要です。

免除返納の目安とメリット


高齢になっても運転し続けることを前提にここまで話してきましたが、事故を未然に防ぐにはやはり免許の自主返納が最も有効です。警視庁では、「こんな症状が出た時は要注意!」と促しています。

 

自主返納をすると、「運転経歴証明書」が交付されます。2012年4月1日以降に交付された運転経歴証明書は、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として利用でき、タクシーやバスの運賃割引、美術館や飲食店の料金割引、商品券の贈呈など、さまざまな特典を受けられます。

車がないと不便に感じるかもしれませんが、事故を起こしてしまっては元も子もありません。自主返納した後も忘れてしまって運転することがないよう、ご家族は注意してください。

親子で自主返納について話し合っても解決策が見出せない場合は、都道府県警察の安全運転相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。安全運転相談窓口では、電話でも相談できるように、全国統一の専用相談ダイヤル(♯0808)も設けています。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

 

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