大人の美しさをつくるのは、顔立ちより”顔つき”です。これは、ミモレでも大人気の美容エディター・松本千登世さんの『顔は言葉でできている!』のコピーです。

顔立ちとは顔の形や作り、顔つきというのは気持ちを表す様子や表情のこと。俳優さんや、久しぶりに会った人に対し「この人、いい顔になったな」と感じる瞬間はありませんか。顔つきが顔立ちを超えていく、それが大人世代なのです。今回は『顔は言葉でできている!』から、「顔つき」を作る言葉たちを印象的なエピソードと共に抜粋してご紹介します。

 

松本 千登世(まつもと・ちとせ)さん
フリーエディター、ライター。1964年鳥取県生まれ。大学卒業後、航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務を経て、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。その後、講談社『Grazia』編集部専属エディターなどを経てフリーランスに。美容や人物インタビューを中心に活動。『もう一度大人磨き綺麗を開く毎日のレッスン 76』(講談社)ほか、著書多数。

 

顔を作るのは言葉!


大人になるほどに「顔つき」が「顔立ち」を超えていくのを感じていました。顔立ちとは、顔の形や作り、目鼻立ち。顔つきとは、気持ちを表す顔の様子、表情。つまり、時間を重ねるごとに、気持ちが顔の形になり、作りになり、目鼻立ちになり、持って生まれた顔が変化していく⋯⋯。

だから、私たちの今の顔は、何を感じ、どう生きているかがそのまま顔に刻まれた結果に違いない、と。すなわち、これからの顔は、意志で作ることができると言っても、過言ではないと思うのです。

冒頭の言葉を始め、瞬時に気持ちを変えた、顔が変わったひと言を、ストーリーとともに綴りました。ありふれた日常に、顔つきを育てる「宝物」が無限にある。自分のまわりにも、たくさん。

「堂々としていればいいんですよね」

写真:Shutterstock

ある俳優の女性へのインタビューで「赤口紅」の話になりました。その人は赤の口紅が似合う大人の格好よさに憧れていたこと。何度も挑戦してきたけれど、そのたびどこか違和感があり、未だ憧れの大人になれないこと。一方で、若い世代の女性が赤の口紅を普段着感覚で、軽やかにしなやかにつけこなしているのを、うらやましく感じていること⋯⋯。

「でも、あるとき、思ったんです。もしかしたら、この違和感は自分だけのものじゃないか、ただ、見慣れていないだけなんじゃないか、似合わないと決めつけているのは、私自身なんじゃないか、って。似合わせたいなら、つけたい赤の口紅を塗って、堂々としてばいいんですよね。それが、まわりから見たら『似合う』ということ⋯⋯」

じつは、「堂々としている」は、ここのところ、私の中でキーワードになっていました。「この服、時代遅れじゃないだろうか?」「この口紅、場違いじゃないだろうか?」。ファッションやメイクなどの見た目はもちろん、言葉も行動も、ひいては生き方そのものまで。知らず知らずのうちに、まわりの様子を窺って、時代の空気を読みながら、「浮かない人」「沈まない人」を演じるのが癖になっていた気がします。本当は、着たい服を着て、つけたい口紅をつければいいのに。自分の「好き」に素直に、自分の「したい」を楽しめばいいのに。迷いなく、焦りなく、後ろめたさなく、堂々としていれば、それが唯一無二の格好よさになるのに⋯⋯。思えば、私が憧れている大人は皆、堂々としているじゃない? 私も、堂々としよう、と心に決めました。

そのためにはまず、いつもいつでも、好きな顔、好きな格好でいることから始めたいと思うのです。家にいるときも、散歩をするときも、打ち合わせをするときも、お酒を飲むときも、いちいち、メイクや服を楽しむ。誰にも会わなくても赤い口紅を塗ったっていい、どこにも行かなくてもダイヤモンドのピアスをしたっていい。いや、ノーメイクや普段着こそ、意志を持って選ぼう。自分を楽しませること=生き生きと生きること。個性は堂々としていることから生まれると、彼女のひと言に教えられた気がするのです。