筆者は、パワハラによる短期離職を経験しました。しかし、以前の記事でも触れたことがありますが、新卒一括採用主義の日本では、短期離職した人は“キズもの”扱い。いくら大卒でも、職歴がなければ就活市場で圧倒的に不利になります。その結果、転職活動では惨敗に次ぐ惨敗。就活市場という荒海を漂流し続けたのでした。今、転職活動などで悩んでいらっしゃる方がいたら、何十社も書類選考で落ち、ズタボロだった筆者を見て安心して! 一人じゃないですよ! と言いたいです。

 

そんな筆者に刺さったのが、下村英雄さんの『社会正義のキャリア支援:個人の支援から個を取り巻く社会に広がる支援へ』(図書文化社)という一冊。下村さんは労働政策研究・研修機構副統括研究員、日本キャリア教育学会前会長
などの肩書を持つ、いわばキャリア支援の専門家であり、キャリア支援者の指導を行う“先生”です。

 

本書は、キャリア支援を行う人の「教科書」としての役割も持った内容なのですが、「キャリア支援って、どうせある程度ちゃんとした職歴やスキルがある人に向けたものでしょ?」「私なんてお呼びじゃない……」なんて思っていた筆者は、本書を読んで「うわぁ、これは私のための本だ!」と感じました。

この本のタイトルである、「社会正義のキャリア支援」とは、端的にいうと、そもそも労働市場の土俵に立てない・立たせてもらえない人たち、労働市場における「普通」からコースアウトした人たちのための支援だといいます。そこには一体どんな支援が必要なのか、本書には網羅的かつ具体的に書かれています。

そこで今回は下村さんに、「社会正義のキャリア支援」とは何なのか? に始まり、転職で辛酸を舐めた筆者が、キャリアにまつわる素朴な疑問をお聞きしてみました。(聞き手=ライター ヒオカ)

 

下村英雄(しもむら・ひでお)さん
労働政策研究・研修機構副統括研究員。⽇本キャリア教育学会前会⻑。⽇本産業カウンセリング学会元監事。筑波⼤学⼤学院博⼠課程⼼理学研究科修了。博⼠(⼼理学・筑波⼤学)。主著に『キャリアコンサルティング理論と実際 6訂版』(雇用問題研究会)、『成⼈キャリア発達とキャリアガイダンス:成⼈キャリア・コンサルティングの理論的・実践的・政策的基盤』(労働政策研究・研修機構/平成26年度労働関係図書優秀賞)、『キャリア教育の⼼理学:⼤⼈は, ⼦どもと若者に何を伝えたいのか』(東海教育研究所)、『キャリア・コンストラクション ワークブック:不確かな時代を⽣き抜くためのキャリア⼼理学』(共著/⾦⼦書房)、ほか多数。