「頑張っても頑張っても、むなしい」
4月は30日の内26日くらい、そんな感じで過ごしていました。
私はライター活動の傍ら、一般企業で会社員として働いています。多くの会社員にとって、4月は年度始まりの月。人事異動があり、組織変更があり、新しい目標設定があり。毎年「心機一転、頑張ろう」というシーズンです。
一方で、年度末の「もう時間がない!」「お客様が待っている!」みたいなお祭り騒ぎと比べると、ちょっとゆるんだ空気が漂うのも事実。やるべき仕事はいろいろあるけれど、そこまで切迫感はないんですよね。
「まだ年度も始まったばかりだし、この仕事の重要性も未知数だもんな……」
そんな、ちょっと引き気味の自分がいることは否定できません。毎日何かにひきずられるように仕事をして、気づけば深夜。たいした達成感もなくパソコンを閉じ、正体不明のモヤモヤを抱えて帰宅する日々。仕事と自分がちゃんとつながっていないような、ちぐはぐ感。それが、「頑張っても頑張っても、むなしい」につながっていたように感じます。
体は疲れているのに、心はぼんやり…。そんなときに出会った本
思い返せば、大忙しだった3月を終えて「いったんクールダウンしよう」と自分に言い聞かせた頃から、このモヤモヤははじまっていました。
心身に大ダメージを与えた繁忙期。4月になれば少しは仕事が減るだろうから、ちょっと頭を冷やそうと決めました。それ自体は生活にメリハリを持たせるためにも悪くなかったと思うのですが、結局仕事が減ることはなく……。
心と頭はふわふわ浮遊しているような状態で、体だけズルズル働き続けてしまったものだから、何をやっても実感が伴わない。体は疲れているのに、心はぼんやりしていて満たされない。そうしているうちに、なぜだか周囲ともぎくしゃくして、コミュニケーションにストレスを感じるようにまでなってしまいました。
そんなモヤモヤにがんじがらめになっていたときに運命のように出会ったのが、この本です。
ちょっと気恥ずかしくなるほど直球な「熱い」タイトル。稲盛和夫さんの本は就職活動をしていた大学生の頃から読んできましたが、興味がひかれたのは「稲盛さんをよく知る13人のインタビュー」がついていること。
27歳でセラミック製品メーカーの京セラを創業し、グローバルカンパニーに育成。通信事業にも進出してKDDIを立ち上げ、さらには78歳のとき、政府の要請を受けて破綻したJAL再生に取り組むなど、「経営の神様」と称えられる稲盛さん。
そんな稲盛さんと共に働き、薫陶を受け、ときには厳しく叱られたという13人が語る、「稲盛さんから受け取ったもの」。本を開くと、稲盛さん自身が語るインタビュー・講演のパートと、13人のインタビューのパートが交互に登場。「自分の情熱をどうやって燃やすか」と「熱を周囲に伝えるには」の両面が学べる構造になっています。
自分を燃やす―「どうしたいか」を考え抜く
京セラ創業の背景には、稲盛さんが新卒入社した会社での挫折がありました。会社は経営がうまくいっているとはとても言えず、同期は一人また一人と辞めていきます。
「俺も早くこんなところ辞めたい!」
愚痴ばかりだった稲盛さんは、同期入社メンバー最後の一人になってしまったときに「いっそ開き直って仕事に没頭しよう」と心に決めたといいます。
一生懸命働いていると、小さな実績ができます。それに目をとめた上司に評価され、自信になる……。そんな好循環でどんどんモチベーションが上がった稲盛さんは、「セラミックの技術で社会を変える」という大きな希望を持つようになります。
その後、会社の経営陣と対立した稲盛さんは、仲間たちと独立して京セラを創業します。
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