【アンチエイジングについて】老いに抵抗し過ぎるとかえって不幸になる
「老い」をテーマに対談を続ける中、二人の話題は「アンチエイジング」に。シワだらけの自分の顔を鏡で見てもぜんぜん悲しくないという中村さんに対し、奥田さんは自分たちの世代はいつまでも美しく若くあることが素晴らしいことだとメディアに刷り込まれている、と世代間で「老い」に対する考えにギャップがあることを示唆しました。
奥田 先生の青春時代は、第二次世界大戦の終結から間もない頃ですもんね。
中村 そうそう。もう私の20代は毎日食べて生きていくだけで必死。30代の頃もまだまだ日本は貧しかったから、毎日仕事して子育てして、食べていくだけで精一杯やった。姿かたちに悩む余裕なんかなかったわ! ましてや50代とか60代になってまで、まだ容姿で悩むなんて考えられへん。
奥田 そもそも「アンチエイジング」という言葉からして、不自然ですよね。老いていくのは人間として自然なことであって、病気でもなんでもないのに。今はメディアだけじゃなく、医療業界にもアンチエイジングを推奨して美容施術をしている医者がいます。本来、医学は病気の人を健康にすることが仕事なのに、同じ医者としてなんだか違和感を覚えます。
中村 老いることが悪いかのように言うから、みんなシワやシミができるのさえ怖くなっているんやろうね。でも、70歳を過ぎてシワもシミもない若い娘のようやったら、私は気持ち悪いと思うけどなぁ。自然に逆らって老いたくない、老いたくないと抗い過ぎると、かえって不幸になるんじゃないかな。
奥田 たしかに、昔の言い伝えにも、不老長寿を追い求めて不幸になる話がいっぱいありますよね。不老不死の薬を追い求めて、かえって早死にしたと言われる秦の始皇帝しかり、人魚の肉を食べて不老不死になったことで苦しんだ、八百比丘尼の伝説もしかり……。
中村 そうそう、昔話はようできてる。さっきも言ったけど、私の時代なんかは、若さやら、美しさやらは、未婚の25歳くらいまでの娘が欲しがるもので、結婚して子どもができたら、皆おばさん! って開き直っていたよ。おまけにうちの場合、結婚した亭主が家にお金を入れてくれへんかったから生活費稼ぐのに必死で、余計に容姿に気を遣う暇がなかったわ。もちろん、アンチエイジングに無駄金を使うこともなかった。そういう意味では貧しい時代に生まれて良かったかもね(笑)。でも、今は豊かで贅沢な時代になって、お金さえ払えば見かけは取り繕えるから、何歳になっても若さや美しさが諦められないんやろうなぁ。
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