高齢者に多い誤嚥性肺炎、その実態とは
2021年の死亡者数を死因順位別に見ると、1位は全体の約4分の1を占めるがん(悪性新生物)で、次いで心疾患、老衰となっています。上位3つは想像がつく方も多いかもしれませんが、今回美穂子さんがママ友たちとの話題に上がったという誤嚥性肺炎も6位に入っているということをご存知でしょうか。
誤嚥性肺炎は肺炎の一種で、高齢者がかかる肺炎のうち、7割が誤嚥性肺炎とも言われています。実際、親の介護をしている方からは、要介護度が高くなるにつれて「誤嚥性肺炎で入院した」という知らせが多く届きます。
肺に入り込んだ菌が原因で発症
では、誤嚥性肺炎はなぜ発症してしまうのでしょうか。通常、食べ物は食道に入りますが、何かの拍子に肺に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。誤嚥が起こると、むせることで異物が外に出ますが、高齢者は外に出せるほどの力がなく、食べ物が肺に残ってしまうことがあります。すると菌が繁殖し、肺炎になってしまうのです。
誤嚥性肺炎が高齢者に多い理由は主に3つあります。
肺炎になると、38度以上の熱が出ることが多いのですが、高齢者に多い誤嚥性肺炎には、この症状が現れないこともあります。そのため、元気がない、寝てばかりいる、喉がゴロゴロ鳴る、食事に時間がかかる、食事中にむせる、といった症状が見られたら要注意。いつもと違う様子であれば、専門の医療機関を受診してください。
予防は口腔内のケアから
あなたは今、唾液を30秒間に3回以上飲み込むことができますか? できるようであれば、まだ誤嚥性肺炎になる心配は低いでしょう。ですが65歳を超えたら誤嚥性肺炎の恐ろしさを認識し、予防を心がけてみてください。
高齢のご家族がいる方にお伝えしたい、誤嚥性肺炎の予防方法は以下の3つ。中でも①の「口腔内を清潔にしておく」は、40代・50代の方々もぜひ取り組んでいただければと思います。口内環境の悪化は3大死因や認知症のリスクを高めるとも言われていて、注視されている分野です。
②食事方法に気を付ける■ひと口の量:多すぎず少なすぎず、無理なく食べられる量
■姿勢:背中が丸まっても胸を張りすぎても食べづらいので、背筋を伸ばす姿勢がベスト
■食の形態:柔らかく、まとまりやすいものが適切。水分は大切だけど、汁物はとろみをつけた方が良い。かまぼこ類、ゆで卵のように噛むとバラバラになるのも注意。餅類も喉に詰まりやすく、口の中にも残りやすい。食後は可能であれば、1時間は座った状態を維持できると好ましい。
③日常的に口腔内を鍛える体操をする口腔内を鍛える体操はいくつも考案されていますが、日本歯科医師会では、口や舌の動きをスムーズにする体操として、「パタカラ体操」を推奨しています。パタカラ体操は、食べ物を上手に喉の奥まで運ぶ一連の動作を鍛える体操で、「パ・タ・カ・ラ」と発音することで、口腔機能低下を予防することができます。
①「パ」…唇を弾くように
②「タ」…舌先を上の前歯の裏につけるように
③「カ」…舌の奥を上顎の奥につけるように
④「ラ」…舌を丸めるように
各発音を8回2セット行う。深呼吸を意識して、たくさん話すことも口の体操になります。
このように、少しずつ気を付けて、できるだけ健康寿命を延ばしたいですね。口から物を食べることは大切な楽しみ。毎日の中で予防を心がけ、いくつになっても食を楽しみたいものです。
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子
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