混浴に伴う不安は、本当に女性だけのもの?


これってきっと、おもてなしですよね? 女性には安心を、男性には解放感をと。でもその発想、女性の体と男性の体に異なる眼差しを向けているのかも。女性の身体は性的なもので本人も恥ずかしいだろうからきちんと隠せるようにしてあげよう、でも男性の身体は性的ではないし本人も恥ずかしくないのだから、短パンいっちょでいいっしょ! というバリバリ異性愛男性目線を感じます。おそらく「女性が安心して入れる混浴温泉」というおもてなしのつもりなのだと思うのだけど、その前提自体があんまり安心できません。エロい女性の体をエロい男性の視線から守ろう! という「おもてなし」……。

「女性が安心な混浴温泉」「温泉に来る男女=カップル」おもてなしのアップデートが必要だと感じた出来事【小島慶子】_img0
写真:Shutterstock

違う違う、そうじゃない。目指すべきおもてなしは、「万人が安心して入れる混浴温泉」ですよ! 乳首とか胸毛とか傷跡とか、上半身を見せたくない男性もいます。そもそも100年前の男性水着は乳首隠れてたしね。そしてお尻の割れ目が露出しかねないのは誰だって落ち着かないでしょう。自分の息子たちにそんなものが用意されていたら怒りますよ私。ペラパン一枚しか渡されない男性脱衣場利用者の心情を丁寧に想像したいものです。

 

そして、いくら広大とはいえ同じ露天風呂に入る女性たちも、ペラパン男性の姿が目に入ったら、なんかカバー領域小さいし生地薄いよねと心配ですよ。だからみんなが心穏やかに広々とした温泉を楽しめるように、全員に同じしっかりした素材の、乳首から膝上まで隠れる温浴着を数サイズ用意したらどうでしょう。長めの貫頭衣スタイルにするとかね。どうしても乳首を露出しないと温泉を楽しめない人は裸で入れる方のお風呂に入ればいいし、どうしても厚手の温浴着が嫌な人も以下同文。

だったらそもそも、混浴温泉なんか入るなって? いや、混浴が問題なのではなく、混浴に伴う不安をどうやって取り除くかってことを考えたいのですが。水着を着て温泉に入る習慣のある国では、混浴だしね。日本でも江戸末期までは公衆浴場は混浴だったそうです。