時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会現象について小島慶子さんが取り上げます。

「肩書きをあんなに人と比べなくてもよかったのに」定年を見据える50代、会社を辞めた立場で感じること【小島慶子】_img0

人事異動の季節です。会社勤めの友人知人はなんだかみんなソワソワ、落ち着きません。あなたももしかしたら、不安な気持ちでいるかもしれませんね。でも、組織での立場は人生のごく一部です。どんな肩書きも永遠ではありません。

 

50歳になった頃から、同世代の会社勤めの人たちがなんだかしょんぼりし始めました。「もう定年まで10年切ったし」「会社でやれることも多くないし」などと呟いて遠くを見ています。えええ、まだ50歳なのに?! 四半世紀あまり働いて、経験も知恵も信用もようやくいい感じに充実してきて、これからじゃないの。なんで急に元気をなくしてしまったの? とびっくりしていたら、なんとあっちの会社にもこっちの会社にも「あと10年で定年だよ研修」みたいなのがあるのですね。もう終わりが見えてきたから色々考えとけよ、ってことらしい。そんな研修、やめればいいのに。

まさにこれから円熟期というタイミングで、なんでせっかくいい感じに充実している人たちの生気を吸い取るようなことをするのかしら。まあ中には威張るばかりで会社のお荷物になってしまっている人もいるんでしょうけれど、どう見ても優秀な人たちまでがしゅんとして引退モードになっているのは、なんともやるせないしもったいないです。