12歳で入学した小学校を、2年後に自主退学

朝ドラ『らんまん』のモデル・牧野富太郎。小学校中退に浮気...破天荒な人生の真相を明らかに!_img0
写真:Shutterstock

小学校中退とはいうものの富太郎が小学校に入学したのは12歳の時。現在では最終学年である6年生に相当する年齢でした。ちなみに、小学校へ入学する以前、富太郎は名教館(めいこうかん)という郷校で学んでいました。12歳で入学し、2年後に退学するまでの経緯について、光川さんはこのように記しています。

 

「そもそも学制が全国に行き渡り、誰でも小学校に通えるようになったのが、富太郎が12歳になった時だったのです。名教館(廃藩置県後は、義校・名教館(名教義塾)となっていた)は、こうした新しい学制の発布を承けて廃止となり、新たに佐川小学校として生まれ変わります。富太郎は、そこに入りなおした形なのです。ただ、小学校の授業はこれまで寺子屋や塾で学んできた富太郎にとって退屈だったらしく、卒業を待たず退学してしまいました。それからの富太郎は自分の興味のあること、とくに植物について独学するようになりました」

なぜ富太郎は小学校の授業を退屈に思ってしまったのでしょう? それは彼の性格というより、それまでに受けてきた教育が大いに影響したようです。

「富太郎が幼少期に受けた江戸時代以来の教育は漢文訓読などかなりレベルの高いものなのです。名教館では明治以後、漢学に加えて川本幸民の『気海観瀾広義』や福沢諭吉の『世界国尽』といった当時最新の訳書を通じて西洋の科学を教授していましたし、富太郎はさらに先生について外国語も学び始めていました」

既に高度な教育を受けていた富太郎にしてみれば、小学校の授業内容はよほど物足りなかったのでしょう。実際、小学校中退後に彼の教養の高さを証明する出来事が起きています。

「小学校を退学した翌年、なんと小学校の臨時教員として招かれたのです。富太郎の才覚を物語っているのではないでしょうか」

10代半ばにして教員を務めるとは! 既にこの時から、偉大な学者としての片鱗を示していたのですね。