「ベタしかない!」「ベタは全然ない!」の両方がある
アツミ:はしもさんにとって、韓国コンテンツの魅力ってどんなとこですか。
はしも:いろいろあるんですけど、突っ込める要素があるっていうのは、僕からしたら魅力なんですよね。満月の夜に馬のって崖飛んだら、なんでタイムスリップすんだよ! とか。馬はなんでついてこないの! とか。そういうところが楽しいです。あとは物語の「足枷」ですね。ラブコメなんかでは最初から「この二人が恋に落ちる、ハッピーエンドになる」ってわかるじゃないですか、なのに「うわなんでそっちいくの?」とか「ああつかまっちゃった!」とか、いろんな障害で物語を盛り上げるのがうまいんですよね。
アツミ:すごく昔、ドラマの脚本を書いていたことがあるんですが、その時に教えてくれた先生が「結果がわかってるのに面白く見せられることが、ドラマの技術」とおっしゃってたんですね。韓国の、特にラブコメって、まさにそうなんですよね。ハッピーエンドは約束されてるのに、誤解とか行違いとか周囲の猛反対とかで、「二人の恋はどうなっちゃうの?」とハラハラしちゃう。
はしも:あとは「ベタさ」ですよね。お笑いもそうですけど、ベタこそが一番ウケるし、最強なんで。
アツミ:はしもさんの本に「病院で赤ちゃん入れ替わる」っていうの、あったじゃないですか。ああいう「出生の秘密系」の設定って、『エデンの東』とか『秋の童話』とかすぐいくつも思いつくくらい多いんですが、昔は日本のドラマもそうだったんですよね。
アツミ:私の世代だと、山口百恵&三浦友和が結婚する前にずっとやってた「赤いシリーズ」とか、そういう設定ばっかりで。
はしも:そうなんですよ。僕の世代だと『ひとつ屋根の下』とかがそうだと思うんですが、すごい面白かったんですよね。日本のドラマもずっとそういうベタなのやってたらよかったのに……ってちょっと思います。
アツミ:でも『夏時間』みたいな作品もある。どっちもある、っていうか、あらゆる種類のものがある、っていうのも、韓国カルチャーの強いところかもしれないですよね。「ベタしかない!」「ベタは全然ない!」の両方があるし、かとおもえば発想がぶっ飛んだファンタジーとか、ファンタジー時代劇なんてよくわからんジャンルまである。
はしも:ファンタジー系は細かい設定がすごく面白いんですよね。例えば『トッケビ 君がくれた愛しい日々』の、火を吹き消すと現れる、とか。
はしも:そういうところから物語にスッと入り込めちゃう。でもこう言う部分の面白さを、知らない人に言葉で説明してわかってもらうのがすごい難しいんですよ。面白いから見てほしいのに、「900年生きた鬼と女子高生の恋? え? どういうこと?」とか言われちゃったりして。「申し訳ないんだけど、死神もちょっと出てくるんだよね」「は?」みたいな。
アツミ:「鬼と死神のブロマンスが最高で」て言っても「ワケワカメ」とか言われますね……。
はしも:そうなんですよ、だからそういう時、僕は「とりあえずは騙されたと思って、6話から見てくれ」って言うんですね。
アツミ:え? 6話から? それってどういう……?
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