レッスン②「(遠回しな)質問」で、相手自身に答えを出させる
京都人は、相手に何かを察してもらいたいときに、そのことを直接言うのではなく、疑問形にして、本当に伝えたいことを考えさせるように言うことがあるそうです。
たとえば、家の中でふすまやドアを開けっ放しにしていると、「誰か来るの?」と言われる、というのはもう定番の形だそうです。この場合「誰かこのあとから来はるの?」と聞かれたって、「あとから来はる人」なんかいるわけがない。それをどちらも承知しているわけです。真意は「開けっ放しはやめようね」という意味だということを、お互いに分かっている。
ほかには、「これは風水か何かですか?」というバリエーションもあるそうです。
疑問文に込められたメッセージ、あなたは気づけますか?
新型コロナウイルスのパンデミックが起きた当初、Twitterで話題になったエピソードも好例です。「(コロナ禍に)京都に帰省していいか」という子どもからの問いに対する「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」という返信。
これは一見、東京在住者を心配するふりを装いながら、「感染者が多い東京からこっちに帰ってくるな」とクギを刺している、「イケズ」なのだといいます。慣れていないとなかなか分かりづらいかもしれませんね。会話の流れによっては普通の言い方です。
たしかに、帰ってもいいかどうかに対する返答でなく、東京で一時的にマスクやティッシュが品薄になっているという報道が話題になっていて、その流れでそっちにはマスクとティッシュが足りているのかと聞かれているとしたら、単なる日常会話でしょう。
しかし、「京都人が言った」ということ、そして問いかけの言葉に、「実家に帰りたいなぁ」という意思を見せているのにこう言われたということならば、ここは、なるほど、と察して納得しなければならないのが、京都式なのだそうです。この会話をよく見てみると、実家に帰っていいかを聞いているのに、東京はどう? と何となく噛み合わない問いかけが返ってきています。この違和感が重要で、それを感じたらもうこれは別の意図があると察しなければならないわけですね。
また、「差し上げます」と申し出たときに、「こんなええもん、もろてもよろしの?」と返されたなら、これも気をつけなければならないのだとか。本当は、あまりほしくない、もらってうれしくないものを差し出されている、という意味を含むかもしれないからです。質問で返してこられたら、とにかく、あれっと思わなければならない。
これが「こんなにいいものもらえませんよ〜」とはっきりとした否定になるのであれば、逆に、あと2回は押して、相手がうんと言うまで、もらってくださいという意思を示し続ける必要があります。
疑問形か、疑問形でないか。それが、重要なサインになっている場合が多いとのこと。
分かりにくいかもしれませんね。でも、遠回しで少し考えないと真意がつかめない言い回しをあえて使うのが、戦略的あいまいさというものでしょう。
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