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トラック運転手の残業時間規制によって物流の混乱が予想される、いわゆる「2024年問題」に対応するため、「送料無料」の表示見直しに向けた議論が始まりました。

「送料無料」というのはあくまでキャッチフレーズであり、実際に送料が無料になるわけではなく、誰かがその送料を負担しています。そのシワ寄せが運送業界に来ている図式であり、これが運転手の長時間労働や低賃金の温床にもなってきました。しかしながら、送料無料の表示見直しには私たち消費者の理解が不可欠であり、簡単に事は進まなさそうです。

 

運送業界では、運転手の長時間労働や、場合によってはサービス残業によって、何とか物流を支えてきたというのが現実です。ところが2024年以降は、トラック運転手の時間外労働時間の上限が年960時間に設定されることから、今の体制のままでは、従来と同じ数の荷物を運べなくなる可能性が指摘されています。

事態を改善するにはトラック運転手の数を増やす必要がありますが、運送業界は低賃金や重労働というイメージが強く、なかなか人が集まりません。このままでは物流に混乱が生じるのではないかとの懸念が生じており、これがいわゆる「2024年問題」ということになります。

採用を増やすためには賃金を上げることが必須であり、そのためには誰かがそのコストを負担しなければなりません。

ネット通販で商品を買う場合、本来であれば送料は消費者が負担するはずですが、実際にはネット通販事業者の多くが送料無料を謳い、消費者から直接的に送料を徴収しない(ように見せている)ケースが目立ちます。もちろん送料無料といっても、あくまでイメージであって、本当に無料になったわけではありません。商品価格の中に送料が含まれており、見えない形で消費者が負担することもありますが、通販事業者が委託する運送事業者に対して過度に値引きを要求する形で、運送会社が送料の一部を負担するケースも珍しくないのです。

こうした業界慣行が続けば、運送業界にシワ寄せが行ってしまい、賃上げを実現できません。

一連の問題を受けて消費者庁は、送料無料の表示見直しが可能かどうか関係団体と協議を進めており、運送事業者側は、誰が送料を負担しているのか明確に表記するよう求めています。しかしながら、ネット通販の事業者にとっては、簡単に送料無料の表示をやめられない事情があります。

 
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