「女風」を知ったきっかけ
「その頃、まだ私は29歳でした。独身の友達も多く、既婚で子どもがいることを羨ましいなんて言われることもしょっちゅう。でも私からすれば彼女たちが自虐的に話す『セフレ』や、付き合う前に身体の関係を持ってしまった云々の話を羨ましいと思ってしまって。好きな人から欲情されるなら、女としてそんな幸せなことないのに、と。
独身の頃は貞操観念を強く持っていたけど、こんなことになるならもっと自由にしておけばよかった……なんて、ないものねだりとわかっていても、そんなふうに思ってしまう自分が嫌でした」
一方で、既婚の友人や仲良くなったママ友は、ほとんどがセックスレスだったと言います。
「少なくとも私の周りでは、子持ちの既婚夫婦の8割はレスじゃないかと思います。少なくとも、前向きに身体の関係を持ち続けてる夫婦はいなそう。原因は様々で、女性側が断固としてしたくないこともあれば、夫が浮気してるとか、夫婦共に自然となくなった、本当はしたくないけれど相手のために何とか低頻度でも続けている……とか。
レスになってるのは私1人じゃない、むしろ多数派なんだと思えば開き直ったような気持ちになりますが、でも毎年の誕生日や結婚記念日、クリスマスなどが来るたびに『もう私は一生できないのかも』と気分が重くなり、1人で泣いたりしていました」
弥生さんの仰った通り、セックスはしなくても死にはせず、健康上問題があるわけでもありません。しなくても平気な人は、それで問題ありません。
けれど性欲には個人差があり、また人間として自然な欲求。平気でない場合、特にまだ若い時期にセックスレスに陥ると、精神的にも不調をきたしてしまうのかもしれません。
「中には、不倫しちゃえばいいじゃん! と軽く言う友人もいました。今どき不倫なんて誰でもしてる、アプリを使えば簡単だと。でも私はやっぱり夫が好きだし、レスは悲しくても夫を恨んでるわけじゃない。私たちの場合は、できる努力をした上でダメだったから。だから浮気みたいなことをしたいと思わなかったし、興味もありませんでした」
「でも……じゃあ、もう一生できないの? という話に戻るんです。年々歳を重ねていくと、言ってもまだ30代半ばなのに、もう女として終わった気持ちになって落ち込むんです。これから来る40代50代、ずっとしないまま過ごすの? って。ふと手にとった雑誌やSNSなんかで、セックスは美容にも良い、若返るなんて文句を見ると、焦るし絶望します。じゃあ20代からレス私は、どんどん老けるし劣化するだけじゃないかと。メンタルが弱った時なんかは、街ゆく人を眺めて、あの人もあの人も、きっとしてるだろうなとか、妙な視界に陥ったりするんです」
ちなみにセックスと美容の関係については、たしかにそう言った説を目にしたり耳にしたりすることはありますが、医学的には根拠はないようです。それでも、たしかにそんな情報を目にすることで、セックスレスに悩む女性は特に、焦りを感じやすくなるでしょう。
「そんなとき、たまたま仕事で仲良くなったモデルの女性と飲みに行ったら、彼女が女性用風俗を何度か使ったと聞いたんです。その時は本当に驚きました。だって、彼女は私より若く、まだ29歳。しかも独身の、一般人離れした美人ですよ」
モデルの友人は、仕事が忙しく結婚願望もないため、彼氏を作ることに興味はない。けれど性欲はあるため、下手に一般の男性と関係を持つくらいなら、お金を払ってプロのサービスを受けた方がずっと楽でコスパが良く、リスクも低いと言ったそうです。彼女の周りにも、そのようにカジュアルに女風を使う友人が何人もいるのだとか。
「衝撃でした。私より若くてずっと美人の女の子が、そんな領域に踏み込んで性欲を解消してるなんて。私には別世界の話だと思っていましたが、酔った勢いで『女風』について色々と聞いてしまい、興味が抑えられなくなってしまったんです」
「紹介割引がある」という友人の言葉につられ、それから間もなくして、弥生さんは様々な葛藤を振り切り、とうとう女性用風俗を使うことになります。
来週公開の後編では、女性用風俗の実体験、そしてその経験が彼女にもたらしたものを率直に伺っていきます。
取材・文・構成/山本理沙
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