名門中高一貫校、浪人の末に最難関大学を卒業した早苗さん(仮名)は、努力の末にたどり着いたエリート会社員の世界に違和感を抱えながら生きていました。そんなとき、ひょんなことから出会った英明さん(仮名)。

彼はいわゆる「元ヤン」ですが、仲間との結びつきが強く、コミュニケーション能力抜群。その明るさと屈託のなさで、万事に控え目な早苗さんの心を開き、結婚します。

習慣や価値観が異なるなか、なんとか結婚生活は順調……かに見えましたが、やはりそう簡単にはいかないようです。

 
取材者プロフィール 早苗さん(仮名):43歳、パートタイマー。
英明さん(仮名): 45歳、運送業のドライバー兼配達員。

     
 

思い込みを捨てることで起きた大転換


早苗さんが3人目のお子さんを出産したあと、一家は賃貸の一軒家を引き払い、さらに郊外の中古一軒家を購入します。車好きで、仕事も運送業の英明さんは、電車に乗る必要がないため「駅から近い都心の物件」に拘る必要がありませんでした。

そのメリットを活かして、駅から徒歩40分以上、でも4LDK、庭でバーベキューができる家を選びました。

「マイホームを買うときも、私の『常識』はことごとく覆されました。まず彼は銀行に借金するのは嫌だ! という考え。理由は利子を払いたくないから。私がいくら『今は金利も安くて、インフレ率を考えると、投資目線で資産価値の落ちにくい物件を買えば与信を使ってローンを組めるのはむしろメリット』と説明しても聞く耳を持ちません。

英明さんはとにかく家族が快適に暮らせる広々とした家、駐車場2台というところは譲りません。私はその頃、体に不調があり仕事を辞めて子育てに専念していたので、通勤の必要もなく、結局は彼の意見に寄り添いました。

結果的に預金を頭金にしたことで月に4万円のローンで済み、生活は結婚前に覚悟していたよりも随分ラクでした。ここだけの話、彼と結婚したときは一生経済的には苦しいと覚悟したので、これは目からうろこというか……自分が若い頃に当たり前だと信じていたライフスタイルって、お金がかかるんだと気づきました」

早苗さんの素晴らしいところは、一旦歩み寄る、という姿勢です。これは簡単なようで、彼女のようにある程度これまでの方法で成功してきた方には勇気が必要なこと。これができなくて破綻してしまうご夫婦を、取材を通してたくさん見てきました。

早苗さんは賢く倹約し、子どもを保育園に入れてパートをするなどしてお金を貯めていきます。

それは早苗さんの今度こそ譲れない「ある目的」のためだったのです。