小澤:ちなみに、私がまだ幼かった頃、両親が教師をしていたためか、自宅に高校生のお兄さんやお姉さんが遊びに来ることが多かったんです。夏休みの1週間ぐらいずっと家にいたりして。あまり深くは知らないですが、自分の家にいたくない事情があるようでした。みんなで食卓を囲んだり、山に登ったりして私は遊んでもらっていたりしていました。振り返れば、孤立といったことに触れた原体験はその時だったのかもしれません。
 

目に見えない傷に、ハンカチは差し出されづらい

「見えない心の傷にハンカチは差し出されづらい」。10代の死因の中で1位が自殺、子どもの“心の孤立”を今考える【小澤いぶきさん】_img0
写真:Shutterstock

――そもそも、孤独や孤立に対して、対応策がわからないというのもありますよね。

小澤:子どもは大人よりも情報が得づらかったり、「人に頼っていい」ということを知る機会や体験する機会がなかったりなど、より孤立しやすい環境にあるのではないかと思います。私たち大人は怪我をしたら、水で洗って保護するのか、病院に行った方がいいのか、なんとなく知っていると思うんです。でも、心の怪我の場合、見えないからどうしたらいいのかが分かりづらい。

人に頼る時、自分の心の状態に気づき、相談したい人の顔が思い浮かび、実際相談するという三つほどのハードルを越えて私たちは人に頼っています。けれど、心が怪我した時にはそのハードルを越えるエネルギーが少なくなっています。なので、自ら自分の怪我に対して資源に辿り着くことも難しいことがあります。

例えば、交通事故に巻き込まれたら、周囲で誰かが救急車を呼んでくれることも考えられます。けれど、心の孤立という目に見えない傷には、身体の怪我のように「ハンカチをどうぞ」「手当しましょう」という周囲の関わりがまだまだ少ない現状があります。青信号を渡っていて交通事故になった時、その人を責める人はいないのではないかと思いますが、心の怪我はその人の問題のように思われてしまうようなスティグマや誤解もありますし、そもそも、見えない傷に対してどう手当するのか? ということがまだまだ知られていない状況です。ですので、私たち一人ひとりが心のことを知り、誰もが心が不調になることがある前提の上で、お互いに関わりの中でできる対処法があることを一緒に学び広げていきたいと思い、今活動しているところです。

 


<「何かアクションを起こしてみたい」と思ったあなたへ>
「Citizenship for Children」プログラムとは

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PIECESが主催する、「Citizenship for Children」は、「市民性」を起点に、自分らしいあり方を探求・実践するプログラム。一人ひとりが自分らしい市民性を醸成し、行動できるようになることで、子どもと自分、地域のウェルビーイングを作ることを目的としています。ここでいう「市民性」とは、「自分にできることで子どもや地域・社会と関わりたい」という心の灯火のことを指しているそう。

今期のプログラムは2023年8月からスタート。受講には募集説明会への出席が必須なので、気になる方はぜひPIECESサイト、および「2023年募集説明会申し込み」にアクセスしてみてください。オンライン説明会は7月18日(火)に追加日程が決定したほか、録画視聴チケットも申し込みできます。

 


取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
 

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