シングルマザーの野望
現在、今井さんのサロンは本格的なエステマシンも導入しつつ、習得したスキルを存分に生かしてマッサージやエステのメニューを複合的に提供しています。
「ゼロから副業として始めたサロンですから、オープン当初は月1万円の売り上げなんていうことも。でも少しずつコースを契約してくださるお客様が増え、今では開業当初に比べて30倍くらいの収入に。……もちろん最初はほぼお客様がいなかったからなのですが、それでも私にとっては本当に嬉しいことです」
大々的な広告は打っていないものの、SNSや口コミ、紹介でお客さんに選んでもらえる理由を、今井さんは自分なりに分析しています。
「これまで、自分の直感を信じて、好きなことには考えすぎずどんどん挑戦してきました。デザイン、イラスト、歯のこと、お料理とお菓子づくり、人を癒すこと、きれいにすること。また歯科やサロンとは全く関係のなくてもお友達の仕事をどんどん手伝いにいっていました。
すると不思議なことに、その場でもいろんな方との出会いがあって世界が広がっていきます。困っている人がいたら放っておけない自分の性格を、要領が悪いのかなと思ったこともありました。でも誰に何を言われても自分がしたいと思ったからする、というのを大事にしてきました」
離婚やシングルでの子育てなど、傍目から見れば決してすべてが順調ではなかった今井さんの20代・30代。でも自分が自分らしく、大切にしていることをぶれずにやり続けた結果、いろんな方が応援してくれたと笑顔で語ります。
印象的だったのは、今井さんのすべてのポイントにおける「初期動作」のはやさ。いいと思ったもの、興味があると思うもの、自分を助けてくれるメソッドだと感じるものはすぐに挑戦。また、他人のアドバイスも非常にはやく、素直に取り入れていらっしゃる印象です。
現代は情報があふれているので、その精査にはどうしても慎重になりがちです。本当に信用できるのか、考えるうちに足が動かないという経験は誰でもあるでしょう。しかし今井さんの場合は、GIVEの精神に溢れ、結果的に人との信頼関係があつくなり、そこからアドバイスや情報がたくさん入ってくる循環がありました。
現在、サロンは順調に顧客を増やし、もちろん歯科衛生士の仕事にも全力で取り組んでいる今井さん。ついに理想の働き方を手に入れたんですね、というと、まだまだ野望があると目を輝かせます。
「シングルマザーとして働く大変さを痛感したことは、人生で大きな転機になりました。生活もとても苦しくて、それでも時間帯に融通がきかなくて雇ってもらえなかったり、ようやく非正規で働けてもそんなに稼げなかったり。
そんな現実と向き合ったからこそ、子育てや家族の時間を大切にしながら自分の好きなことを仕事にして、かつ時間帯を理由に不利にならず、適切な収入が得られる。将来サロンを拡大するなら、そんな職場環境を作りたいと思っています。
自分の人生が充実していると思えるからこそ、全力でお客様にサービスを提供できます。これからもエネルギーを循環させていくのが目標です」
逆境をずっと嘆いているのはもったいないのだと、今井さんを見ていると思えます。同時に小さな一歩でも、とにかく進めば、新しい世界に続いていくのだと。
ふたつの天職を得た今井さんの、ますますのご活躍をお祈りします。
歯科衛生士
リラクゼーションサロン「cocoluana」代表兼セラピスト
今井恵理さん
Eri Imai東京都出身。都内の歯科クリニックにて勤務しながら2023年、自宅でサロン「cocoluana」をオープン。
▶ @eriimai
▶ @cocoluana_eri_therapist
シングルマザーの歯科衛生士が、エステサロンをオープンするまでの足跡はこちら
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構成/山本理沙
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