マイナンバーカードに関する深刻なトラブルが相次いでいますが、河野太郎デジタル大臣が名称を変えるという話まで持ち出すなど、まさに制御不能の状況となりつつあります。

7月5日、マイナンバーカードを巡る問題で、衆院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成特別委員会の閉会中審査に出席した河野太郎デジタル相。写真:つのだよしお/アフロ

政府はマイナンバーカードの普及を目標として掲げており、健康保険証や自動車免許証との統合化を進めていく方針です。保険証については来年の10月に紙の保険証を廃止することが決まっており、マイナカードに一本化するスケジュールになっていますから、これは事実上のマイナカードの義務化と考えて良いでしょう。

 

しかし、実際にマイナカードの運用が始まると、あちこちで深刻なトラブルが発生しており、このままのスケジュールで運用するのは危険な状況となっています。一部の論者は、システム開発に失敗はつきもものであり、大目に見る必要があるといった主張をしていますが、今回の件には全く当てはまりません。一連のトラブルは本来、あってはならないものであり、システム全体に深刻な欠陥があることを示唆するものです。

今、発生している一連のトラブルは、複数のデータを連携する際の重複チェックや書式の統一が十分に進んでいない中、無理にデータ連携を図ろうとしたことに起因しています。

これまで個人情報データというのは、多くの機関が様々な書式で保有していました。例えば銀行では漢字の名前に加えてふりがなを使って本人を特定していますが、一方で戸籍にはふりがなという概念はなく、漢字でしか本人を特定できません。そうなると戸籍のデータと銀行のデータをシステム上で連携させる場合、誰と誰が同一人物であるのか、機械的に完全一致させられない状態となります(さらに細かいことを言えば、フリガナはひらがななのかカタカナなのか、姓と名は一文字空いているのか、番地の表記は統一されているのかなど、様々な問題があります)。

こうした問題を回避するために導入されたのがマイナンバー制度です。

全国民に対して、ただ一つの固有番号を振り、すべてのデータにその番号を反映させれば、誰がどの人物であるか確実に示すことができ、住民票のデータと戸籍のデータを結びつけたり、銀行の口座情報を連携させる場合でも、間違いなく個人を紐付けることが可能となります。しかし、それぞれの機関が持つデータをしっかりとチェックせず、誰にどの番号を振っているのか十分に確認しないまま一気にデータを連携すれば、あちこちで深刻なエラーが発生するのは当然の結果といえるでしょう。

自分の住民票を請求したら他人のものが出てきたといったトラブルはその典型です。こうした事態を防ぐためにこそマイナンバー制度があるわけで、一連のトラブルが発生していること自体が問題であり、本末転倒な状況といって良いのです。

 
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