民間軍事会社ワグネルの軍事的な反乱で、ロシア情勢が混沌としてきています。ロシアの権力中枢で、今後どのような事態が発生するのかは何とも言えませんが、一方でロシア国民の政府に対する支持は、それほど下がっていないように見えます。

6月27日、ロシア民間軍事会社「ワグネル」の反乱阻止に貢献した部隊の前で演説するプーチン大統領。 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

民主国家の国民からすると、明らかに間違った戦争をしておきながら、自国を支持し続けるという感覚はなかなか分かりづらいのですが、これについてはどう考えれば良いのでしょうか。

 

自国を支持するという感覚は、実は国によって様々であり、大きな違いがあります。

国民感情についての国際比較調査(※)を見ると、「たとえ自国のやっていることが間違っているとしても、自国を支持すべき」と回答する人の割合は、ロシアでは何と58%もあります。一方で、ノルウェーやスウェーデンではそのような人は15%程度しか存在しません。

この調査結果を今回の戦争に当てはめてみると、ロシアの人たちは仮に戦争が間違ったものであっても、半数以上の人が政府を支持すべきと考えていることになりますから、すぐには政権批判に至らないことが想像ができます。ノルウェーやスウェーデンの人たちは、政府が間違った行為をしているのであれば、支持しない人がほとんどですから、仮に政府が侵略戦争を行っても、即座に批判が起こり、戦争継続は難しくなるでしょう。

間違っていても自国を支持する人が過半数という状況では、プーチン大統領がウクライナからの撤退を簡単に決断しないのも当然といえば当然かもしれません。

自国を支持すべきと考える人の割合が高い国としては、ロシアをはじめ、トルコやベネズエラなど民主化が進んでいないところが目立ちます。一方で、スイスや韓国も比率が高く、一概に非民主的な国がそうであるとは言い難い面もあります。

ロシアは特に強権的な政治で知られており、反体制派は容赦なく弾圧されますから、「ロシア国民は声をあげたくても怖くてできないのだ」というのが一般的な認識だったと思います。確かにその通りであり、多くのロシア人が弾圧の恐怖に怯え、「戦争反対」と叫べないのは事実でしょう。

一方で、いくら政府が怖いからといって、ここまでプーチン政権に対する支持率が高いことについて、理解しづらい面があったのも事実ではないでしょうか。しかし、一連の調査結果を見るとそれも納得といえるかもしれません。

ひるがって私たち日本人はどうでしょうか。

 
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