世界経済フォーラム(WEF)が発表する2023年版「ジェンダーギャップ・レポート」の男女平等度ランキングで、日本が九つも順位を落とし、146か国中125位という惨憺たる結果になったことが波紋を呼んでいます。こうしたランキングについては、「一喜一憂すべきではない」「恣意的なものであり参考にならない」といった批判がありますが、筆者は正反対だと考えます。各種ランキングには、私たちがどうすれば豊かな社会を実現できるかを示す重要なヒントが詰まっており、むしろ諸問題を解決するよいきっかけとすべきでしょう。
男女平等ランキングは、男性と女性の格差について「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4項目で評価したものですが、日本は特に経済と政治の分野で著しく低い順位となっており、これが全体の足を引っ張っています。
確かに、評価項目をどう決めるのかは難しい問題であり、すべての人にとって完璧に公平な指標というものは存在しません。しかしながら、ランキングが適当に決まっているのかというとそうではなく、多くの専門家が検討を重ねた上で指標が策定されます。基本的に同じ基準で毎年評価をしているわけですから、順位がどう変動したのか、その理由は何なのかを探ることで、経済や社会を改善するヒントが得られるのです。
ちなみに先進国におけるランキングと1人あたりのGDP(国内総生産)の関係をグラフにすると、一定の相関が見られます(※)。つまり男女間の格差が少ない国の方が賃金が高く、社会が豊かということです。これはあくまで相関関係を示したもので、格差が縮小したから豊かになったと断言できるものではありません。
こうした相関について指摘すると「相関関係と因果関係は違う」などと、鬼の首を取ったように批判する人をよく見かけるのですが、残念ながらそのような主張をしている人は、十分に統計を学習しているとは言えません。
確かに統計学上、相関関係があるからといって因果関係があるとは結論付けられませんが、マクロ的な統計で一定の相関が観察される場合、(サンプルの選択が正しいのであれば)背後に何らかの因果関係が存在するケースが多いというのが現実です。したがって、一定の相関が観察される場合、その理由について踏み込んで分析することは常識的なアプローチと言って良いでしょう。
現実問題として、格差の縮小と豊かさに関する関係性を推察することはそれほど難しいことではありません。
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