「自己啓発本」「宗教本」はNG?
子育て情報について、「これは受け入れる」「これは受け入れない」と自分で判断できなくなってきたら、要注意です。取捨選択するどころか、
「これをやれないから、今の私の子育てがうまくいかないんだ」
などとひとつの情報に強くこだわったり、いろいろな情報に振り回されたりするような感じがしたら、情報はしばらく遮断しましょう。そして、「自分自身のケア」に移行してください。
子育てのあらゆる問題は、自分自身のケアをしっかりすることで、いつのまにか気にならなくなったり、「なんとかやっていける」という意欲も自然に湧いてくるものです。もちろん、情報収集は大切です。問題に突き当たったら、情報を入れて知識を得て、スキルやメソッドも試してみて、自分なりの解決方法を編み出していくとよいでしょう。でも、それは、「ママ自身が疲れていないこと」が大前提なんです。
ちなみに、私のカウンセリングにいらっしゃる方は、すでに「うつ状態」(疲労3段階)にある人たちが多いです。本人は苦しさを早く解消したくて、子育て本以外にも、自己啓発や宗教、スピリチュアルの本やサイトを参考にしたがりますが、私からはその時点では、それ系の情報収集をやめてもらうようにお願いしています。
こうした類いの本は、「○○すれば幸せになれる」と、苦しさ解消の道筋を示してくれるので、救われる面があるのも事実です。しかし、うつ状態では、自信をなくし、自分を責める方向に受け取ってしまいます。そうした本が好きな人は、こちらが禁止してもつい読んでしまうとも知ってはいるのですが、「なるべく読まないようにしてくださいね」といつもお話ししています。
著者プロフィール
下園壮太(しもぞの そうた)さん
NPO法人メンタルレスキュー協会理事長、元陸上自衛隊衛生学校心理教官。陸自初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生科隊員(医師、看護師、救急救命士等)やレンジャー隊員等に、メンタルヘルス、カウンセリング、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。本邦初の試みである「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして、約300件以上の自殺や事故にかかわる。2015年8月退職。現在はNPO法人メンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ、産業カウンセラー協会、県や市、企業、大学院などで、メンタルヘルス、カウンセリング、感情のケアプログラム(ストレスコントロール)などについての講演・講義・トレーニングを提供。著書50冊以上。公式HP: http://www.yayoinokokoro.net/
『ワーママが無理ゲーすぎてメンタルがやばいのでカウンセラーの先生に聞いてみた。』
著者:下園壮太 時事通信社
1760円(税込)
過酷な子育て環境の中で日々奮闘し、イライラや不安、自責感、プチうつなど、メンタルの不調を抱えがちな現代のワーキングマザー。無自覚なままうつ病になるリスクを抱えた彼女たちに向け、元自衛隊の心理カウンセラーが心をラクにするための「心構え」と「対策」を伝授します。「基本→戦況分析→戦力分析→実践」と自衛隊式の思考法をベースしているから、とても具体的で説得力も十分。「自衛隊」という言葉から連想される猛々しいイメージとは裏腹に、ワーママの疲れた心に優しく寄り添ってくれます。
写真:Shutterstock
構成/さくま健太
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