日本人女性の9人に1人がかかるという、乳がん。40代が発症の第一ピークということもあり、mi-mollet世代にとっても身近な病気です。がんは早期発見が非常に大切な一方で、過剰な検診による弊害は、あまり知られていないかもしれません。今回は、乳がん検診で本当に必要な検査と、過剰な検査がもたらすデメリットについて、山田悠史先生に聞きました。

教えていただいたのは……

 

山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビライブニュースαレギュラーコメンテーター、NewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)、コロナワクチンの正しい知識の普及を行うコロワくんサポーターズの代表。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
Twitter:@YujiY0402

 


編集:最近、乳がん検診の話題になることが多いのです。早期発見の大切さに気付かされることも多く、「40歳よりも前に、できるだけ早く検査を受けたほうがよいのでは? 」と思うことがあります。また、乳がん検診にはマンモグラフィ、超音波検査、MRI検査など多くの種類があるので、早く受けたくてもどれを受けたらよいかわからない、という意見も聞きます。

山田:なるほど。いくつか回答のポイントがありますが、まずは乳がんに限らず、「がん検診をする目的」をおさらいしましょう。検査を行う上で大切なのは、「早期発見」だけではありません。その検査をすることで、「検査を受ける人の健康、ひいては命を守る確率が高くなるかどうか」という視点が非常に大切なのです。

たとえば、早期発見したがんが、ゆっくりと進行し、死ぬまでその人に悪さをしない種類のがんである場合もあります。その人の命を奪うがんではないのに、治療のために抗がん剤を投与すれば、場合によってはそちらの方が命を縮める結果に繋がりかねません。

極端な例かもしれませんが、このようにその人の健康増進に繋がらなければ、やみくもな検査をやらない方がいいのです。「この検査は、本当に自分の健康増進に繋がるのか? 」という視点をもつことが重要ですね。

編集:なるほど! とにかく「早期発見すればするほどいい」という思考になっていました。少し視点をプラスする必要がありますね。