悲しみの根が深いからこそ、他者を責めてしまう
ーー被害を受けた人が、他者に対して被害意識が強くなって、厳しく接してしまい、人間関係が築きにくくなってしまうんですね。さらにトラウマによって、物事の捉え方自体が変わってしまう。“問題がある人”みたいに思われてしまうけど、辿っていくとすごく傷ついた体験があるんですね。確かにすごく傷ついた人は、言われたことを曲解してしまったり、全部自分を責めている言葉のように捉えて、攻撃的になってしまって、不要な衝突や不和がおきてしまうということはあります。
白川:見方がすごく固定的なものになって、俯瞰できなくなってしまうんです。他者に対して信頼が持てないから、基本的に人が怖いし、誰の言うことを信じたらいいんだろう、誰も信じられないとなってしまう。偏屈な人だなとか、被害者的になって人を責めるとか言われやすいですが、本当は深いところにある解消されていない傷や感情が物事の見え方に投影されてしまっているだけなんです。
感情のキャパ「耐性の窓」の大きさは、幼少期の体験で変わる
白川:周りとの繋がりがよくて、すくすく育った場合、「耐性の窓」といって、感情の耐性が大きくなるんです。だけどトラウマのある人の本当の耐性の窓は小さいんです。赤ちゃんも耐性の窓が小さいですが、何かあるとギャーッてすぐ泣くし、ちょっとびっくりするとことんって寝ちゃいますよね。逆境体験、例えばDVの目撃をしていたとします。お父さんと母さんに助けを求めることも上手にできなかった。そうすると何が起きるかというと、いい子のふりをするようになるんです。まるでやれているみたいだけれども、実はそうじゃない。やれてますと言っていても、キャパをはるかに超えてとても無理している状態。「偽りの耐性の窓」といいます。こういう人はとても多いと思います。
ーー自分の状態がトラウマの影響を受けているということに気づくことって難しいですよね。基本的に自分が受けた傷は過小評価してしまいがちだと思います。自分がこれだけの被害を受けたというのを受け止めることってすごく力がいるので、別に自分は大丈夫だったって思うようになってしまいます。
白川:平気平気って思ってしまうんですよね。認めていたら生きてこられなかったと思います。認めないことによって精一杯生きてきたから、それはおかしなことでも悪いことではないんです。だから、今まではそれでやれてきたことに感謝して、気づいたら着ぐるみを脱いで、自分の小ささや幼さを愛しんで、小さい耐性の窓を少しずつ広げていくことができたらいいですよね。
Comment