ここからは、私が気になっていたことについてお答えいただいた内容を、一問一答方式でお伝えしていきます。
Q. 資金不足でウィッグが作れず、寄付した髪の毛が余っているという話を聞いたのですが……。
A. 年間提供数を設定し、無理のない範囲で提供しているため、JHD&Cではそのようなことはありません。
ウィッグの無償提供には材料(毛髪)、資金、人手が必要です。当団体でも過去にウィッグの提供をストップした時期がありましたが、それは予算の面ではなく、ロングヘアの毛髪不足によるものでした。そのためヘアドネーションにご協力くださる際には、ヘアスタイルを楽しみながら、無理のない範囲でできるだけ長く伸ばしていただけたら大変ありがたいです。
また、予算面では年間提供数の上限を150体と設定し、返礼品つき寄付の「チャリティファンディング」なども活用して無理のない提供に取り組んでいます。こちらも、髪を切らないヘアドネーションとして多くの方にご協力いただいています。
なお、ウィッグのお申し込みから提供までに1年半から2年かかり、常に非常に多くの方が待機されているため、現在は新規の受付を一時停止しています。
Q. 31cmの髪の毛ばかり集まって、ロングヘアが足りないということでしょうか?
A. 一番希望の多いロングウィッグ用の髪の毛は、寄付全体の1割ほどなのは事実です。
当団体にウィッグを希望されるお子さんのほとんどがロングヘアをリクエストされています。ロングヘアのウィッグを作るためには50cm以上の毛髪を使用しますが、寄付全体の1割ほどです。オーダーメイドでウィッグを製作していますので、50cmに満たない毛髪は、トリートメント処理ののちショートウィッグのオーダーがあるまで事務局で大切に保管しています。
ドネーションヘアの長さとウィッグの仕上がりの目安
31cm・・・ショートウィッグ
40cm・・・ボブウィッグ
50cm・・・ロングウィッグ
60cm・・・スーパーロングウィッグ
Q. 人工毛のウィッグもたくさんあるなかで、人毛を使うメリットとは?
A. 見た目のナチュラルさが一番です。
ウィッグユーザーの視点でいえば、何より自然で、他人が見たときにウィッグと分かりにくい点が一番のメリットです。ただし人工毛、人毛、ミックス毛それぞれに長所と短所がありますので、どのウィッグを選択するかはその方の考え方や生活環境によって大きく異なります。JHD&Cが人毛100%のウィッグを作って無償提供する理由は、そもそも活動の出発点が、美容師が立ち上げたNPOが行う「ヘアドネーション」だからです。
Q. ヘアドネーション自体が「髪があるほうがいい」という価値観の押しつけを助長することにはならないですか?
A. 当団体では、髪型の自由は表現の自由と認識しています。
髪があってもなくても、ウィッグをつけてもつけなくても、本人の選択が尊重される社会であることが理想ですが、現実には大多数の方に髪があり、髪がないことで生きづらさを感じる方が少なくありません。そのため、ウィッグを必要とする方がいる限りは無償提供に取り組みます。
同時に「髪がない人はかわいそう」「ウィッグをつけて多数派に擬態することが笑顔につながる」といったように、社会にある無意識の思い込みや差別について考えていただくために、講演などの機会を通じてお伝えすることが大切だと考えています。実際ここ数年で、小中高校・大学などからの講演のご依頼や、部活動やレポートのために生徒さんから取材のお申し込みを受けることが多くなりました。若い世代の方に少しでも知っていただくことは私たちにとって大きな希望です。
いかがでしたか? みなさんのヘアドネーションに対する不安や疑問も、少しは解消されたでしょうか? JHD&Cさんには、自分でも失礼だなと思うような質問にも丁寧にご解答いただき、大変ありがたかったです。
次回は、私自身がドネーションをしてみて、よかったこと・大変だったことなどについてまとめてみようと思います。こちらもよろしければ、ご覧ください!
第3回は9月20日公開予定です。
取材・文/中田絢子
編集/國見 香
協力/Japan Hair Donation & Charity
第1回「【ヘアドネーション体験記】人生最長に伸ばした髪を人生最短にカット。リップラインボブに!」>>
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