配慮のお願いの仕方も学ぶことが必要


​ー​ー職場に、こういう配慮をお願いしますと要請するのはあくまで本人なんですか、それとも代わりに伝達してくれるような人がいるんでしょうか。

田中:身体の障害で、考える力、判断能力に困難がなければ本人が伝えられますよね。例えば車椅子になったので、車椅子が通れる環境を整えてくださいとか、透析が必要なので、勤務時間を調整させてくださいなどです。でも発達障害や知的障害、高次脳機能障害の場合、配慮を自分でうまく説明することが難しい場合もあります。そういう時には、就労支援機関などの支援担当が障害特性や症状とその対処方法や作業能力を把握して、本人の理解を得たうえで、合理的配慮の希望事項を書面にまとめたり、補足説明を行う場合があります。障害への配慮として、採用面接などで支援員の同席を求められる場合もありますし、企業側として支援員の同席を積極的に希望する場合もあります。ただし、働く場合、基本的には職場では、本人とやり取りしますよね。本人が自分の病気や障害を理解し、自分で対処すべきことと、職場に配慮してもらっていいことの線引きを理解しておかないと、働き始めてから過剰な配慮を求めてしまう可能性もあるかと思います。そういう実践的な就労準備を支援機関でおこなっておくことがとても大切だと思います。

 


本人の申告と現実のギャップにどう対応するか


​ー​ー障害者雇用では、特に配慮が必要ありませんと本人が言って、大丈夫だろうと思って採用したけど実は問題があとで起きたとか、本人の申告と現実のギャップがあるということをよく聞きます。

田中:私も面接で「配慮は特にいりません」と言われても、実習などを通して実際の場面を確認させていただくようにしています。実際あったのは、発達障害の方で、福祉施設への通所では勤怠が安定しているので「通勤は全く問題ありません」とおっしゃっていたのですが、実際就職したら「通勤ラッシュがきつくて、ストレスがたまって駄目です」とか「夏休みが終わって学生が増えて、整髪料のにおいで電車に乗れないのでどうしましょう」などとおっしゃって通えなかったことです。職場に着いてしまえばとても元気でしたが。

「求めなすぎ」も「求めすぎ」も職場のトラブルに。障害を持った人と働く上で必要な「合理的配慮」とは_img0
写真:Shutterstock