最後まで一人で自分のために家事をして、尊厳を守っていくために必要なことは、日々の生活を暴走する欲望からできるだけ切り離し、不要なモノに囲まれないようにすること。不要なモノの管理に自分の人生や感情を割かないことのようです。
そして、p 218に「捨てて捨てて捨てまくる」という見出しがあるのですが、それは藤本にとっては「選んで選んで選び抜く」と読めます。自分の大事なこと、選べない人間はいらぬものに囲まれて死ぬしかないのだろうか……。稲垣さんは服の9割減に成功したそうです。そして残ったのが家事力(=モノでなく生ききるための技能と五感)。
理想としては、人生の折り返し地点くらいでは(一般的には50歳前後ですね)、こういう価値観の変換体験をするのが望ましいようです。若い時はお金で解決する贅沢や快楽を味わうのも経験ですものね。
余談ですが、稲垣さんはおそらくすごい料理上手。美食と言われるものを食べ込んできたのだろうと想像されます。その鍛え抜かれた舌や家事センスは著作を読めば、行間から、あまりにも滲み出ています。そして、行き着いた最低限の家事アクションが、多くのレシピ本を出版され、有名料理研究家と呼ばれる方々が行き着いた最後の境地と酷似しているのが特徴です。最低限でしかも豊かさを感じられる家事の提案、そして家事にも定年説があるのが面白かったです。
そして、著作コラムで紹介されている「調理法別に3種類作る」と決めた、藤本がただいま実践中のラク家事メモがまたすごい!
①火を通さないおかず(サラダ、漬物など)
②さっと火を通すおかず(炒め物、焼き物など)
③じっくり火を通すおかず(煮物、汁物など)
こ……この新しい視点での削ぎ落とし調理法、もはや発見! やるとわかるのですが、考えなくても自然と食感に差も出るし、味付けにも、酢っぱい、塩味、甘辛味とバリエがつきやすいという……。さすがレシピから卒業した方の発想!
と、ここで、私にもうひとかたの尊敬するビューティ界の著者の声が聞こえるのです。
「日本人はどうしてもある価値観が流行ったら、それ一択みたいなところがあってグラデーションが許されない感じがしますね」。誰よりも私自身が、すごーくその自覚があるので、対極の御意見番を! と思って視聴したのがこちら。
対極といえば林真理子さん。大ヒットの著作は『野心のすすめ』。これ、欲望のすすめとも翻訳できますね(笑)。
成田悠輔さんとの対談の中でも「バブルのおばさんがまた言ってる……と思われそうですが」「賞をとってすごーく売れているお若い作家の方でも、家政婦さん、お手伝いさんを雇うとかそういう方はゼロのようです」など。いや~、面白いです!
おりしも天空では、多くの惑星が逆行中で、見直しの最中。「風の時代」に入って2023年3月には冥王星が水瓶座に移動したけれど、現在はヒエラルキーと既得権益を代表する山羊座に舞い戻り、「地の時代」の膿出しに焦点が当たっているように感じます。冥王星が水瓶座に本格的にイングレスするのは2024年1月24日です。自分なりの価値観、考えていきたいです!
文/藤本容子
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