必要でない時に抗菌薬を服用するのは、なぜいけないの? 薬が効かなくなる「耐性菌」とは


山田:今、大きな問題となっている「耐性菌」という言葉を聞いたことがありますか? 必要のない時に抗菌薬をむやみに処方・服用し続けていると、既存の抗菌薬が効きにくい細菌、つまり「耐性菌」が増える原因となるのです。

編集:言葉だけはなんとなく聞いたことがあるような......。「耐性菌」が増えると、どんな状況になるのですか?

山田:これまでは、感染、発症しても適切に治療すれば軽症で回復できた感染症が、治療が難しくなって重症化しやすくなり、これまで使っていた抗菌薬を使用しても太刀打ちできなくなってしまうんです。結果、死亡に至る可能性も高まってしまいます。

編集:そんな重大な状態になるなんて、全くイメージできていませんでした。

山田:繰り返しになりますが、風邪、いわゆる感冒症候群は、基本的にはウイルスの病気ですので、細菌に対する効果のある抗菌薬は全く無効です。ところが、風邪に対する受診に対して、抗菌薬を処方されるケースは、今でも非常に多い、ということが知られています。

たとえば、日本で風邪で病院を受診した時に抗菌薬が処方される割合は、3~4割と報告がされています。つまり、3割を超える方に、風邪、つまり抗菌薬が効かない病気に対して抗菌薬が処方されていることになります。メリットはゼロですよね。一方でデメリットの一つは、先ほどご説明した「耐性菌」を生み出してしまう、ということです。

編集:そもそも「ウイルス」と「細菌」の違い、それぞれに効く薬の違いが曖昧だった患者側の立場としては、「デメリットを知らなかったから」処方された薬をそのまま飲んでしまう、というのはなんとなく理解できます。そして、これからは必要のない抗菌薬は服用しないようにします。
ただ、メリットがゼロ、人類全体にとってデメリットが大きいということがハッキリとわかっているにも関わらず、なぜ今でも風邪などに抗菌薬が処方され続けているのですか?