「運動会」を楽しめない理由は、刺激の「強さ」や「多さ」にあり

「運動会」が楽しめない──感覚過敏と感覚鈍麻が抱える、理解しにくい“しんどさ”とは?_img0
 

感覚過敏のある人は、学校行事などいつもと違う状況では人一倍ストレスを感じ、疲れてしまうことがあります。

運動会はさまざまな強い刺激に満ちており、感覚過敏の人にとってはつらい状況です。周囲の応援の声、スピーカーから流れる音楽やアナウンス、そしてとりわけ徒競走のピストルの破裂音は、聴覚を激しく刺激します。

 

一方ドンマちゃんも、耳ではピストル音をとらえているのに、スタートが遅れてしまいました。これは、感覚鈍麻があるために「音が聞こえづらい」「音の情報を電気信号として脳に届けるのに時間がかかる」というわけではないかもしれません。

この場合は「感覚の統合」がうまくいっていない可能性があります。

感覚の統合とは、私たちが体の五感を通して絶え間なく受けている多くの刺激を整理・統合して計画を立てる脳の働きです。

私たちは感覚の統合が働いて初めて、「適切な体の動き」を取ることができます。たとえばコップを持ち上げようとしたとき、私たちは、目でコップを認識し、距離や大きさ、形をとらえ、重さを予測し、それらの情報を統合し、適切な力加減の調整で筋肉を動かして手を伸ばしてコップに触れ、適切に力を入れて持ち上げることで初めてコップを手に取ることができます。このような一連の動作がうまくいかなくなることの理由には、「入力」「統合」「計画」「出力」などいろいろな部位の機能の特性や問題が考えられます。

カビンくんもドンマちゃんも、感覚の特性が原因で、せっかくの実力を出せませんでした。画一的な環境の中では、能力が発揮しにくい人も出てきてしまうのです。