給食の時間をひたすら我慢の状態にさせているもの
学校生活の中で、給食の時間が楽しみという人も多いでしょう。ところが、感覚の問題を抱えている人にとっては、1日のうちで最もつらい時間になってしまうことがあります。
感覚過敏があると、食べ物のニオイや味、食感は過剰な刺激となり、苦痛が生じることがあります。そのため通常は、「よく知っている好きなものだけを食べる」「苦手なニオイがしたらその場から離れる」といった対応をして刺激を避けるようにします。
しかし学校では、給食の時間は基本的に教室にいなくてはならないので、自分で刺激への対処をコントロールできません。そのため、給食の時間はただただつらさを我慢する状態になり、楽しむどころか、気持ち悪くなったり頭痛がしたりと、体調不良になってしまうこともあります。
カビンくんは、家では食べられる数種類のメニューを繰り返し食べるようにしていますし、毎日、明日の給食の献立表をチェックしています。これは、食事によって予想外の刺激を受けないようにするための自衛方法だといえるでしょう。
また、食べ物の味やニオイだけでなく、周囲の話し声や配膳の音も、感覚過敏の人には過剰な刺激となります。
一方、感覚鈍麻の人も、味やニオイ、食感を感じづらいので、給食の時間を楽しむのは難しいかもしれません。食事は誰にとっても大切です。感覚特性のある人が苦痛を感じることなく食事ができるよう、食事する場所を選べたり、代わりのメニューを選べたりと、個人個人が選択できる環境がのぞましいといえます。
『カビンくんとドンマちゃん』
著者:加藤路瑛 ワニブックス 1595円(税込)
感覚過敏研究所の所長であり、自身も感覚過敏の当事者として発信を続ける現役高校生・加藤路瑛さんが、感覚過敏(カビンくん)と感覚鈍麻(ドンマちゃん)の2人が感じている困りごとを、小説仕立ての文章と解説文を交えて紹介。児童精神科医の黒川駿哉さんが監修を務めているだけに一つひとつの文章に説得力があり、読み応え十分です。自覚なく「過敏」や「鈍麻」に悩まされている人には、大きな心の支えとなるでしょう。
写真:Shutterstock
構成/さくま健太
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