今でこそ、シングルで子育てをしている人は増えていますが、昭和初期には笠置さんのような生き方をしている人は少なかった。そんな逆境を跳ね返すように、ステージ上では楽しそうなパフォーマンスを披露していました。その姿は、今を生きるわたしたちにも勇気をくれます。
第1話冒頭で、鈴子は笠置さんと同じシングルマザーであることが明かされました。水上恒司さん演じる鈴子の最愛の人・村山愛助が、大阪にある日本随一の演芸会社「村山興業」(おそらく、「吉本興業」のこと?)の御曹司であると考えると、パートナーとのお話は実際の生き様とリンクさせているのでしょうか。
ただ明るい人より、悲しみや苦しみを乗り越えてきた人が見せる明るさって、なんだか説得力がありませんか? わたしは、「嫌なことは寝たら忘れるんですよね〜」と言っている人を見ると、「寝たら忘れるくらいの嫌なことしかないっていいなぁ……」と思ってしまうタイプなので(笑)。笠置さん、そして鈴子が見せる悲しみの先の笑顔には惹きつけられます。
今だからこそ、改めて感じるエンターテインメントの力
2020年、新型コロナウイルスの流行により、わたしたちの生活様式は大きく変化しました。最近は、ようやくふつうの日常が戻ってきた気がしますが、未曾有の危機を乗り越えるなかで、エンターテインメントが持つ力を再確認した人も多いのではないでしょうか。わたしも、そのひとりです。
『ブギウギ』のモデルである笠置さんは、戦後の元気がなくなった日本に、明るく前向きに生きる活力を与えた人物でもあります。戦時中は、笠置さんが歌うジャズソングは「敵性音楽」とされていましたが、彼女はがむしゃらに明るく前を向き続けてきた。
いまの日本に、笠置さんがいたらどうなっていたのだろうか。朝ドラを見ながら、そんなことを考えさせられました。
ただ、猛烈なスポットライトの裏側には、大きな影ができるのはお約束。第1週目の鈴子はふつうの小学生だったので、明るい女の子のままでいられていましたが、年齢を重ねてスターダムに駆け上がっていくなか、さまざまなドラマが巻き起こるのは間違いないでしょう。ジェットコースターのような人生を、明るく楽しくウキウキに生きた笠置さんの生き様を通して、何かを学べたらいいなと思います。
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